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2023.03.03

ノーベル平和賞受賞者は平和を乱す者??

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ビジネスの世界に広がる人権意識

近年、人権の問題はビジネスの世界でも注目されるようになってきています。それは、自社の労働者の職場環境を人権の観点から考えて整備することだけでなく、サプライチェーンにも目を配るように広がっています。

国連などを中心に、人権尊重に関して、企業への「指導原則」や規制の強化が進められており、その取組みのプロセスを人権DD(デューデリジェンス)というのですが、日本でも、2022年9月に、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定されました。

そこでは、企業内の労働条件やハラスメントの問題はもとより、国際的なサプライチェーンにおける労働問題(強制労働、児童労働などは言うまでもなく、基本的労働条件の違反)など、ビジネスと人権の関係についての取組みが規定されています。

先に述べたように、「普遍的人権」の概念に則った規制の推進ですが、企業は、それを企業活動を縛る規制だけではなく、そのガイドラインに沿うことで企業の評価を高めるものと捉えるべきだと考えます。

例えば、世界的に有名なグローバル企業でも、海外の製造工場で児童労働が行われていることが知られ、世界的な不買運動に繋がったこともあります。ガイドラインを守ることは、そうしたリスクを回避することでもあるわけです。

逆に言えば、消費者である私たちも、企業活動や企業の運営に関する情報に関心を高めることが必要になってきていると言えます。

例えば、このスマホの価格をより安くするために、部品に必要な希少金属をどうやって採掘しているのか。そこに従事する労働者の働き方が、その国の慣習的なやり方であったとしても、それが「普遍的人権」に反するものあれば、もう、それは容認されるものではなくなるということです。

そのことは、消費者にとっては歓迎することではなく、製品の価格が上がることに繋がることかもしれません。

しかし、いままで内に閉じていたことが、ガイドラインができたことによって「言いたいことが言える」状況になったのであり、それは、それを知った私たち消費者が、人権のあり方について考えるきっかけになったということでもあります。

そして、そのことは、他国の労働問題というだけでなく、私たち自身の労働問題や人権について考えることでもあると思います。


英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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