2024.03.14
- 2021年7月9日
- ビジネス
貿易金融がなければ、リスクに満ちた貿易が発展することはなかった
宮崎 イキサン 明治大学 政治経済学部 専任講師貿易金融の基本は貿易信用状(L/C)取引
実際の貿易金融には様々なパターンがありますが、基本となるのは貿易信用状(Letter of Credit)を用いる方法です。マスコミなどを通して、L/C取引という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
例えば、A国のA社が、B国のB社に財を発注し、B社がそれを受けることになったとします。
すると、まず、A社は、B国のB社と取引をすることを、A社の取引先銀行のA銀行に話し、B社に貿易代金の支払を約束してくれるように依頼します。
A社と取引実績があるA銀行はA社に対して信頼があるので、これを了承し、A社の輸入代金の支払いを保証する旨の書類を、B社の取引先銀行であるB銀行に送るのです。この書類を確認したB銀行は、そのことをB社に伝えます。
B社は、そこで、どの時点で代金が受け取れるのかなどをB銀行と協議して決めておきます。それが例えば、財の船積み完了時点と決まれば、B社は財の生産を始めます。
生産が完了し、船積み会社にそれを引き渡すと、船積み会社は、問題なく船積みが完了したことを書類にしてB社に渡し、B社はこれをB銀行に提出します。
それを確認したB銀行は、B社に対して代金を支払い、財の代金を肩代わりして、B社に先払いをするわけです。
その後、B銀行はこれらの必要書類をA銀行に送ります。A銀行はそれを確認すると、B銀行に対して、B銀行が肩代わりした代金を支払うわけです。ここで、本来であれば貿易当事者同士の支払いが、銀行同士のやり取りに取って代わられているわけです。
最後にA銀行はその代金をA社に請求しますが、例えばその支払を、財が届き、問題のないことを確認し終えるまで、あるいは特定の月の月末まで待ってくれることがあります。つまり、A社は輸入代金を後払いすることができるわけです。
この仕組みにおいて重要な役割を果たすのが、A銀行がB銀行に送った支払を保証する書類である貿易信用状(L/C)というわけです。
こうした貿易金融の仕組みにより、輸入するA社も、輸出するB社も、リスクをかなりの程度回避することができ、リスクを引き受けた銀行は、そのリスクを評価・引き受けたことにより手数料を受け取ることができます。
つまり、貿易金融を利用することは関係する者それぞれに対してベネフィットがあり、このような仕組みによって貿易が潤滑に行われ、活性化することになるのです。
貿易というと、比較優位の理論にあるように、各国や各地域が生産に優位を持つ財や産業に目がいきがちですが、一方で、貿易金融の仕組みが洗練化され、貿易がよりスムーズに行えるようになっていったことが、国際貿易を通じた現代のグローバル化を支えている一因であるとも言えるのです。