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東京五輪+リニア新幹線 2030年まで続く国力回復基調

市川宏雄教授 これまで見てきたように、筆者は東京オリンピックの開催は、日本が国力を回復する絶好の機会であると考えている。あえて、開催に向けて懸念すべきことを指摘しておこう。多くの国から数多くの外国人が訪れることが想定されるが、安心・安全な都市の秩序を維持することが求められる。地震国である日本では、その災害への対応は不可欠である。東京の建物は、先の東日本大震災でも倒壊などがほとんど起こらなかったように、地震に強い構造を持っている。ただし、多くのインフラ(基盤)の老朽化が進んでいる。優先順位を付けて更新に着手しないといけない。さらに、地震によって交通網が寸断された場合、大量に発生する帰宅困難者やパニックに対する対策も必要である。また、先にも指摘したが、空港キャパシティを拡充することは喫緊の課題であろう。こうした課題はあるものの、今後、オリンピック開催に向けて様々な整備事業や新産業の誘発も期待される。しかも、2027年のリニア新幹線の開業は、東京が名古屋まで取り込んで巨大都市圏を形成する。サービス業主体の東京と、製造業主体の名古屋が一体となった新都市圏の出現で2030年頃まで、日本は国力の回復基調を維持すると考えている。オリンピック開催は国力回復のまたとない起爆剤なのである。一国民として東京でのオリンピック開催を楽しみにするとともに、専門家の立場から、より良い開催実現のための都市政策や都市開発のあり方を提言していきたいと思っている。

※掲載内容は2013年12月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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