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ブラック企業は、人を人間と見ていないことがわかっていない

明治大学 商学部 教授 出見世 信之

消費者にとって良い会社が、ブラック企業であるかもしれない

出見世 信之 ひとくちに「ブラック企業」と言っても、誰にとってブラックなのかは異なることがあります。過酷な業務に耐えきれず社員が自殺する企業も、取引先から見ると、自分たちの無理を聞いてくれる頼れる企業かもしれません。あるいは、消費者にとっては、高品質な商品を安く提供してくれたり、他にはないサービスをしてくれる、好感度の高い会社かもしれません。しかし、そうしたサービスを提供するために、その社内で働く人には相当な負荷がかかっているかもしれないと、私たちは想像することが必要かもしれません。欧米では、企業活動に問題があると知られた場合、それが世界的なブランドの企業であっても、不買運動が起こることがあります。そこまでして価格を下げたり、サービスを向上させる必要があるのか、という意識を消費者がもっているのです。それに比べると、日本の社会はあまりにも便利さや安さを追求し、そこに価値を置き過ぎているような気がします。そうしたことを考え直すことが、私たち自身の生活や、社会の健全性を守ることにもつながるのではないかと考えます。

 最後に、就職を目指している若い皆さんや、転職を考えている方々に一言。企業を判断する良い方法は、就職情報を鵜呑みにせず、投資家に向けて発信している、アニュアルレポートのような企業情報も確認することです。そこでも、都合の悪いデータは公表していない企業もあります。情報を隠す企業は、就職情報でどんなに良いことを言っていても、働く人にとってブラック企業である可能性があります。できれば、そこに勤めている人の話を聞いてみるのが良いでしょう。仕事をしていると、時には無理をしなければならないこともありますが、大事なのは、その後に会社がどんな対応をするかです。家族の記念日や行事などに休暇を取らせてくれたり、無理を続けさせないように配慮したりしてくれる会社は、働く人を人間と見ている会社であるといえるのではないでしょうか。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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