座右の銘、私のモットー「知は力なり」と「知行合一」
教授陣によるリレーコラム/座右の銘、私のモットー【16】
私が大切にしている言葉として、「知は力なり」と「知行合一」があります。どちらも古くから語り継がれてきた言葉ですが、現代社会を生きるうえでも、なお強い意味を持っていると感じています。
まず「知は力なり」。これはイギリスの哲学者フランシス・ベーコンの言葉で、「知っていることそれ自体が力になる」という意味です。
この言葉は、とりわけ現代においては、防御のための力として重要だと考えています。
私たちは社会で生きている中で、時に不条理な出来事に直面します。理不尽な扱いを受けたり、納得のいかない状況に置かれたりすることもあるでしょう。
そのとき、「なぜこんなことが起きるのか」と立ち止まり、その背後にある仕組みや構造を理解できれば、受ける精神的なダメージが少し和らぐはずです。
つまり、知識は単に世界を説明するためのものではなく、生活において自分自身を守るための手段にもなります。その意味で、知は確かに力なのだと思います。
一方で、「知行合一」という言葉もまた、私にとって欠かせない指針です。これは中国の思想である陽明学に由来し、「知ることと行うことは本来一体である」という考え方を示しています。
人文社会科学、とりわけ正義や倫理といった規範に関わる知識においては、単に「知っている」だけでは不十分です。その知識が実際の行為に結びついてこそ、意味を持つと言えるのです。
私は社会正義を研究していますが、それは単に理論を語ることにとどまるものではありません。自分自身が「正しい人」であろうとし、「正しい行為」を選び取ろうとする姿勢が問われていると考えながら、日々研究しています。
たとえば、社会の不条理を批判しながら、日常の中で他者に対して不公正な尊重を欠く態度や振る舞いをしてしまうのであれば、それは明らかに知識と行為が矛盾しています。
このように考えるならば、学生に接する態度や評価のあり方ひとつをとっても、自分の行為が常に「正義」に照らして評価されているという自覚を持たなければなりません。
私たちが直面している問題の多くは、個人の問題であるだけでなく、社会構造に根ざした問題でもあります。だからこそ、知識を得ることによって、その問題をより深く理解し、そうした理解に合わせて自分の行動を変えていくことができるのです。
教育や研究を通じて得た知識は、自分自身を支える力になります。そして、その知識に基づいて行動することは、たとえ小さくても社会を変えていく一歩になるはずです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
