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2026.04.16

地球温暖化対策に重要な、火力発電と再生可能エネルギーの最適な運用とは?

地球温暖化対策に重要な、火力発電と再生可能エネルギーの最適な運用とは?
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現在の地球温暖化の主要因は、化石燃料の燃焼に伴う炭酸ガスの排出です。日本において、CO2など温室効果ガス排出量の4割強は発電由来であり、実質的にそれは火力発電によるものです。2011年の東日本大震災以降、日本の発電電力量に占める火力発電の割合は著しく増え、現状では6~7割を火力発電に頼っています。火力発電では、燃料の熱エネルギーを電気に変換する過程で大きな損失が生じ、総合熱効率は60%に届いていません。この変換効率を高めることは、温室効果ガス排出削減の観点からも重要と言えるでしょう。

太陽光発電の大量導入は、温室効果ガスの削減につながらない危険性がある

一之瀬 真志 発電分野での地球温暖化防止というと、再生可能エネルギーばかりが取り上げられがちです。しかし同一コスト、所要時間において比較する場合、実際に温室効果ガスを最も減らす効果があるのは、火力発電所における運転の効率化だと考えます。

 再生可能エネルギーのうち、陸上風力発電や水力発電などはすでに日本の地理的条件では、これ以上の発電所の増設は現実的でなく、今後最も増やせる可能性があるのは莫大な資金を要する大型洋上風力を除けば太陽光発電だけです。しかし、太陽光発電を大量に導入すれば、その不安定さのしわ寄せが火力発電に及び、無理な運転を強いられ、結果としてガス排出量の削減が思うようにいかないおそれもあるのです。

 というのも、太陽光のような再生可能エネルギーの比率が高まると、気象条件によって発電量がランダムに変化します。負荷端からの発電電力が増えれば電圧は上昇し、発電電力が減れば電圧は低下しますが、一般的な電気製品は、電源や機器の出力端子で電圧が上下に変化する端子電圧変動に、10%程度しか耐えられません。これを超過すると保護装置が働いて負荷が遮断され、停電してしまいます。

 こうした事態を避けるため、蓄電池によって需給調整する試みも進められています。しかし、導入量はまだ充分とは言えず、数時間から一日単位で生じるような、比較的ゆっくりとした発電電力の変動には対応しきれていません。そのため現状、こうした変動に対応するには、火力発電機の起動や停止が必要となり、多くの火力発電所では一日に2度、起動停止を行う運用が採られています。

 火力発電所では、最も高い温度の部分で1000℃を超える高温にさらされており、上記のように太陽光発電の発電電力変動に対応して燃料消費量を高頻度で増減するとボイラーやタービンに熱疲労が生じます。これは材料の寿命消費を加速させます。加えて火力発電は定格、つまり発電電力が最大の場合に最も効率が高くなるようにできているので、定格近くの運転ができない時間が長くなり、燃料は多く必要になるうえ、温室効果ガスも多く排出されてしまうのです。

 では、火力発電所を効率よく運用していくにはどうしたらいいのでしょうか。

 アプローチの一つとして、エネルギー変換効率の向上が挙げられます。火力発電の効率は、タービンを回す高温の蒸気・燃焼ガスの温度と、排熱を受け取る外気や冷却水の温度との差で決まります。差が大きいほど、同じ燃料でもより多くの電気を取り出せるため、効率を高めるには燃焼温度を上げる必要があるのです。しかし、高温は設備材料の限界にぶつかります。材料が劣化したり、強度が保てなくなったりするためです。その壁を越えるには、材料技術の進歩が不可欠です。

 とはいえ材料の研究はとても地道で厳しいものです。発電設備は数十年もの間、基本的に毎日使うものですから、このような長期間の繰り返しの負荷がかかったときに設備がどうなるかは、実験してみなければわかりません。材料の疲労に伴う影響を調べるために機械をずっと回し続けて実験データを取るのは大変であり、膨大な時間とコストを要します。

 もう一つのアプローチとして、前述のようにハードウエアを改善する方向ではなく運用面つまりソフトウエアを改善するという方向性があります。こちらであれば、大きな先行投資や技術革新が必ずしも要るわけではありません。ソフトウエアの改善によって、大きな効果を得ることも可能です。あらかじめ今後想定される需要の変化が高精度に把握できていれば、不必要に多くの発電ユニットを待機運転させる必要がなくなります。需要変化に応じて相応のユニットを立ち上げ、あるいは解列・停止することができ、大部分のユニットを長時間定格運転の状態に置くことができるようになります。燃料消費量が抑えられ、温暖化ガスの排出量を減らせます。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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