再生可能エネルギーの安易な導入は、地球環境や他国に影響するおそれも
再生可能エネルギーはもちろん大事なものではありますが、安易に導入を進めようとするのは危険です。本来、地表や海水面に与えられていたエネルギーが失われることによる、環境への影響も懸念されます。
たとえば電力会社が大規模水力発電を行おうとする際には、当該水系に関する撤退的な調査が行われ、環境アセスメントは必須となります。それに引き換え、最近の太陽光の大量導入は、再生可能エネルギー最優先を「錦の御旗」として掲げることで、太陽光が土壌に及ぼしていた効果を十分検討しないままに認められてしまいました。
九州中央部にある阿蘇山には、大規模な太陽光発電設備「メガソーラー」が導入されたことで土地が痩せ、洪水が起こりやすくなったとも言われています。やはり再生可能エネルギーの導入であっても、地元の方々との話し合いを行い、環境アセスメントを充分に行ってから取り入れることが不可欠です。
風力発電分野で有名な例として、英国の北海における風力の大規模開発の影響で、オランダに吹く風が弱まり、国土水没の危険性が訴えられたことがあります。オランダは歴史的に風車で有名な国ですが、こうした風車は産業用動力としてばかりでなく、低地へ侵入する海水をくみ出す働きもしています。海から吹く風が弱まると、海水をくみ出す作用が低下し、高潮や海面上昇の影響を受けやすくなります。国土の多くが海面より低いオランダにとって、風の変化は治水にも直結する問題なのです。
電力面でも、風が弱まったことでオランダの風車が十分に回らず、風力発電が立ちゆかなくなる事態が生じました。その結果、英国からオランダへ送電線を設けて電力を融通することで、問題解決が図られることになりました。
中国大陸や東シナ海での大規模な風力開発も、日本に吹く偏西風に影響を与える危険性があるのではないでしょうか。気候や環境に対して人間の社会活動が与える影響について、どう考えるのかは難しい問題ですが、エネルギー保存則がある以上、一方の利益が、別の場所での負担や影響として現れる可能性は否定できません。全体をシステムとみなして、そこに関与する個別の要素の調整が必要なのです。
自然相手の問題は、人間が行うことほど規則通り決まった形で動いてくれるわけではないのが難しいところです。再生可能エネルギーも、地球の物理をよく考えて導入していくべきです。「温室効果ガス排出の主要因となっている火力発電は、できるだけ早く縮小すべきだ」と決めつけるのではなく、複眼的に最適解を追い求めていく柔軟性も、現状のエネルギー問題においては重要だと考えています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
