
図書館、とくに地方自治体が設置する公立図書館は、図書館法第17条で「入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」という無料原則が規定されています。つまり国民がもつ基本的人権の一つ、「知る権利」を実質的に保障する公的な機関なのです。あらゆる人の「知りたい」という要求を叶える役割、ならびに知識基盤社会を支えるインフラの役割を果たす施設であるともいえるでしょう。そのような公共図書館が、近年、さらなる変化を遂げつつあります。
1970年代、「貸出サービス」「児童サービス」「全域サービス」が公共図書館の重点に
図書館の機能として、図書の貸出を中心としたサービスが定着したのは1970年代です。
もともと日本の図書館は、読みたい本を図書館員から受け取る閉架制でしたが、戦後占領期に現代と同じく利用者が自由に手に取れる開架制のCIE図書館が国内に複数設置されていきます。CIE図書館とは、GHQの一部局であるCIE(民間情報教育局)によって、アメリカの公共図書館をモデルとしてつくられたものです。しかし1950年代は蔵書の数が圧倒的に少なく、一般的にはなじみの薄い学術書や教養書が中心だったこともあり、貸出よりも学生の学習スペースとしての利用が中心でした。
その後、高度経済成長期に入り、国民のライフスタイルも変わりつつあった1963年、わが国の各種図書館の全国組織である日本図書館協会が、図書館振興を図るため、「中小都市における公共図書館の運営」という報告書を発表しました。主に人口5万から20万人ぐらいの自治体の図書館を対象に、図書館改革の指針を提示しました。
通称「中小レポート」と呼ばれるこの報告書では、図書館の本質的機能は「資料提供」にあると明言しました。資料が充分利用されるためには高水準の資料購入費が必要であり、なおかつ都道府県立図書館ではなく、直接利用者にサービスする市町村立図書館が公立図書館の中心となるべきことを説きました。
中小レポートの内容をさらに検討するため、日本図書館協会は1968年に、公共図書館振興プロジェクトを始動し、その結果を1970年、「市民の図書館」という報告書で公表しました。報告書には、市民の求める図書を気軽に貸し出す「貸出サービス」、児童の読書要求に応える「児童サービス」、図書館を市民の身近に置くための「全域サービス」、この3点を最重点目標とすることが示されました。
これまで館内での閲覧を前提とした「資料提供」が基本でしたが、これをきっかけに、資料を利用者が持ち出して使うことができる「貸出サービス」が全国に広がっていきます。また、自治体の規模にもよりますが、同じ自治体に住んでいても、身近に図書館がない人もいました。図書館利用に差が生ずることにもなるので、自治体のどこに住んでいても同じように図書館を利用できる「全域サービス」をめざします。具体的には、分館を設置したり、図書を積み込んだ移動図書館車を走らせて、図書館の資料を多くの人たちが利用できるようネットワークを構築したりする施策が進められました。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
