
人生で影響を受けた人物人間力を高めて、魅力あふれる人を目指そう
教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【89】
私が会計学の研究職に就いたのは、明治大学の名誉教授であり、私の指導教授だった松本穰先生との出会いがきっかけでした。
先生は本学において最年少で教授に就任。ゼミの教え子は1,381人にのぼり、オリンピック選手からプロスポーツ選手、公認会計士、税理士など、実にさまざま。勉強も遊びも、めいっぱい応援してくださる方でした。
親父ギャグが散りばめられた授業は毎回楽しく、笑わなかったことがなかったほど。その中で、人生の教訓もたくさん教えていただきました。
その一つが、「人との出会いを大切にすること」。先生はネットワークがとても広く、困った時に頼れる方がたくさんいらっしゃいましたし、反対もまたしかり。いつも誠実な方々に囲まれていた印象があります。
さらに、「人生は敗者復活戦の連続だよ」「学生時代に一生付き合える仲間を作りなさい」ともおっしゃっていました。今振り返ってみても、会計学という学問以上に人として大事なことを教えていただきましたね。
温厚な先生でしたが、大学院時代に私が不誠実なことをすると、それはそれはこっぴどく叱られたものです。それだけ本気で私を育てようとしてくださっていることが分かり、とても嬉しかったことを覚えています。
教える仕事を始めてから影響を受けたのは、中部学院大学シティカレッジ特任教授で、「益田(ました)の森塾」を主催する森均先生です。史上最年少の公認会計士・税理士試験合格者を輩出した指導者として有名です。
同じ教育者として興味がわいて講演を聞きに行くと、落語のように面白く1時間笑いっぱなし。これをきっかけに、森塾の研修に家族で参加しました。
そこでは、子どもも、大人も、障がいがある方も関係ありません。みんなで助け合いながら沢登りをしたり、地元の料理を食べたり、体験と講義を通して人間力を磨いていくのです。
教え子たちとも一緒に参加しましたが、自然を舞台にすることで得意不得意が分かり、一人ひとりの特性も見えてきました。また、どうやったら目標達成できるか、どのようにやる気を引き出すか、といった教育者としてのヒントも得ることができました。
また、松本先生には以前、教育の基本をうかがったことがあります。それは、褒めること。2回叱ったら、3回褒める。必ず1回増やすことで、人は素直に育っていくとおっしゃっていました。
松本先生も森先生も人間教育に力を入れていましたが、これは何も対学生に限ったことではありません。社会で働く皆さんも、後輩の指導や自己成長のために、まずは人間力を高めることに目を向けてみてはいかがでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。