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仕事の基本を学んだら、失敗も糧に挑戦を続けよう
2022.11.10

人生で影響を受けた人物仕事の基本を学んだら、失敗も糧に挑戦を続けよう

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【98】

私の研究者としての基盤を築いてくださった恩師、京都大学名誉教授の鍋島陽一先生です。日本国内で幾つものラボを立ち上げてこられた、私にとっての言わば“スーパースター”であり、目標とさせていただいている方ですね。

私がお世話になった先生のラボは、「研究費のことは気にせず、好きなことを自由にやりなさい」という若い研究者にとっては夢のような場所でした。

当時の私は任期付き雇用で「結果や成果を出さなくては」とあせっていたのかも知れません。学問を志す者として「真理を探究する」という一番大切な視点をなくしていたように思います。

先生は「君は何がやりたいんだね?」と毎日のように私に質問してくださいました。私は忘れかけていた研究者としての本質に関わる問いを、いつも突きつけられていました。

私の返答に対して、先生はいつも真摯に、大きな心で向かい合い、面白そうなテーマ、つまらないかもしれないテーマを、鋭い視点から指導してくださいました。

今考えるとこの問いは「この先30年、40年にわたって自分が興味を持てる、生涯にわたって研究できるテーマを、環境を整えてあげるから若いうちに見つけなさい」という先生の親心だと分かります。

自由かつ厳しい鍋島先生のご指導のおかげで、私も生涯の研究テーマである「食・栄養シグナルと生体の新しい原理を解明する」という目標にたどり着くことができました。

そして、紆余曲折がありながらも、鍋島先生や家族、多くの先生方のおかげで、明治大学において栄養生化学研究室を主宰するに至りました。

優秀な学生達にも恵まれ、現在は「脂質構造シグナルと脳・内分泌機能のコミュニケーションの理解」に向けた研究を行っています。

ビジネスでも同じだと思いますが、若い人が自由にやると、私もそうであったように目先の結果を追い求め、本質から外れやすいものです。

そのような時はベースとなる大枠や方向性は示し、細かいことは言わず、後は自分の興味に従い、失敗を恐れず挑戦させることが大切ではないでしょうか。私もそういった環境を提供することが役割だと思っています。

学生自身が決めたことは、まずは一定期間頑張ってもらい、その期間におもいっきり試行錯誤して、それでも結果が出なければ次に進ませます。

一度の失敗でめげてしまう人もいますが、しっかりしたテーマと本人の意欲や興味があれば問題ありません。むしろ失敗はウエルカムですし、新しいアイデアの起点になるはずです。

小さな失敗を繰り返しながら、無限にある方法を試していけば、きっと成功に繋がるでしょう。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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