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日本式リミテッドアニメーションによる省略があるゆえに進化した工夫

日本の多くのアニメファンはご存じのことだと思いますが、日本のアニメーションの基礎を築いた手塚治虫は、毎週30分間のアニメ番組を制作していくために、作画枚数を節約するコストダウンの手法を開発しました。

それは、アニメーション表現のもつ省略と誇張の拡大解釈です。動かなくても良い部分をなるべく動かさず、また使い回したりしたのです。それによって、描くセル画の枚数を大幅に減らし、マンパワーや制作費の問題をクリアしようと試みたのです。

この手法は、日本式リミテッドアニメーションとして定着し、結果として量産が可能となります。

それに対して、手抜きという批判もされましたが、省略があるからこそ、誇張が効果的になり、マンガに近い止め絵の表現なども活かせることになったのです。

枚数が少ない分、ストーリーのほうに凝るとか、リアルに見せるために細部の描写に凝る、という独自の進化が始まっていきます。

例えば、ハッピーエンドで終わるのではなく、主人公が犠牲となるとか、どうしようもない別れがあるような悲劇的でドラマチックなストーリー展開です。子供向けを越えたストーリー重視の発想が、舞台設定や独自の世界観の構築に繋がっていきます。

とくに、1974年放映の「宇宙戦艦ヤマト」では、宇宙からの侵略により、地球が絶滅の危機に瀕するという壮大なスケールの世界観が構築され、地球救済のため銀河系を越えて旅するヤマトには、悲劇性とともに神話性がもたらされています。

また、先に述べた「AKIRA」では、メカや都市の描写において、ものすごく細かい部分まで省略せず、静止画でも立体感や重量感を感じさせる、存在感あふれる物を画面に出したのです。緻密な表現力は、諸外国から日本的なハイテクのイメージで受けとられたのです。

リアリティの追求は世界観の構築にも及んでいます。1979年放映の「機動戦士ガンダム」(富野由悠季監督)では、スペースコロニーの仕組みやモビルスーツの動力源など、様々な設定を当時の科学的な理論を根拠にして積み上げています。

もちろん、理論からの飛躍もありますが、突き詰めたリアリズムをベースにイマジネーションを喚起する手法は、世界のSF映像の中でも、おそらく先駆けていたと思います。

さらに、「ガンダム」では、いわゆる、行間を読むというような表現手法もとられています。例えば、描かれていない別の場所や時間で、なんらか大きな戦闘があった、ということをセリフの断片や映像の端々に散りばめ、観る人に想像させる種まきがなされているのです。

その結果、放映が終了した後に出たプラモデルが爆発的に売れる現象を起こします。自分なりに想像したものをガンプラ(ガンダム・プラモデルの略)の改造に反映できる。つまり、ガンプラを想像力の触媒にして、「ガンダム世界」に自分なりの参加ができるのです。

先に述べた、ファンが感想を語り合ったり、ハルヒダンスを見せ合う、参加型のアニメーションの楽しみ方の起源のひとつが、ここにあると言えます。

こうした受け手側の工夫や手法は、観る人をもっと喜ばせたい、もっと楽しませたい、という制作者たちの思いに応えて始まっています。送り手と受け手の思いの共有が、日本のアニメーションを、世界に類のない独自の特徴をもつカルチャーへ進化させてきたのです。

次回は、日本のアニメーションの未来について解説します。

#1 日本のアニメはいつから世界で人気になったの?
#2 アニメはオタク文化?
#3 アニメを観て、幸せになる?
#4 日本のアニメの特徴って?
#5 日本のアニメの未来はどうなる?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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