2024.03.21
- 2017年4月4日
- リレーコラム
#4 特定商取引法の対象外には消費者契約法を適用
川地 宏行 明治大学 法学部 教授「特定商取引法の対象外」と「事業者の所在地が地方にある場合」のトラブルについて。
●特定商取引法の適用対象外取引について。
前回、特定商取引法の適用対象となる継続的なサービスは6業種であることをお話ししました。ところが最近は、この6業種に入らない資格試験の予備校とか、自己啓発セミナーの学校などで利用者が途中で受講をやめる場合に授業料を返さないなどのトラブルが起こることがあります。事業者は、特定商取引法の対象業種ではないので強気ですが、2001年に施行された消費者契約法では、不当な内容の契約条項を無効にする規定があります。契約書に、中途で受講をやめても授業料は返さないという条項があっても、そのような不当条項は無効にすることができるのです。このように特定商取引法で対処しきれない場合でも消費者契約法によって適切な対応ができる仕組みになっています。
●事業者が被害地とは別の地域にいる場合について。
また、原野商法という悪徳商法もあります。あまり価値のない地方の山林を将来値上がりが見込める土地だと言いくるめ、状況がよくわからない都内在住の人などに高値で売りつける悪徳商法です。事業者の所在地は東京以外の地方であることが多く、都内在住の消費者が状況を知って苦情を申し立てようとしても、事業者に連絡が取れず、都内の出張所ももぬけの殻、ということがよくあります。しかし、私が委員を務めています東京都消費者被害救済委員会は、事業者の所在地がどこであっても、契約を締結した被害者の住所地である東京に事業者を呼び出して、事業者と消費者の双方の申し立てを聞き、斡旋案や調停案を出しています。事業者は不実告知や「絶対に儲かる」などの断定的判断の提供を行っていることがほとんどですが、今日では、それは消費者契約法の不当勧誘事案にあたり、消費者は契約を取り消すことができます。また、悪質な事業者については、東京都により事業者名を公表することもあります。このように、事業者の所在地が地方であっても、お近くの相談センターなどに相談すれば、対応してもらえますので、安心してください。
今日では、特定商取引法によるクーリング・オフだけでなく、消費者契約法によって契約の取消しや契約条項の無効を主張することができます。悪徳業者の被害に遭ったと思ったときは、すぐに各自治体の相談センターや国民生活センターに相談してください。
#1 悪徳商法に泣き寝入りしない!消費者保護の法律を学ぼう!
#2 どんな悪徳商法も投網に掛ける消費者契約法
#3 トラブルの多くは、クーリング・オフで解決できる
#4 特定商取引法の対象外には消費者契約法を適用
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。