社会変化に応じた漸進的な大学の国際化
――もうひとつ、公共機関としての大学の国際化について、どのようにお考えですか。
日本は人口減少局面に入り、大学入学希望者も減少すると予想されます。需給の観点からは、需要(受験者)が減るため、供給(定員)も減らさないと受験定員割れが生じたりする可能性があります。定員を減らさないなら、外国からの留学生を増やすか、社会人入学を増やす以外に手がないでしょう。また、人口減少にともない国内市場が縮小すれば、外国で職を探さざるを得なくなるので、日本人の外国語力を強化しなければならず、大学が国際化を進めることは方向として正しいと思います。
ただし、問題はその進め方の速度です。国は国際化を進めるために、留学生や外国での教育・研究経験のある教員等の比率拡大を掲げています。国際化の参考事例としてアメリカの大学を念頭に置いているようですが、アメリカは大学の教育や研究の質が高く、有力な大学を卒業すれば、学費に見合う就職先がほぼ保証されています。結果として世界中から留学生が集まってくるわけです。このような因果関係を無視して、無理に留学生を増加すれば、欧米の大学に合格できない学力の低い留学生を集める可能性が高く、無理して外国での教育・研究経験のある教員等を増やせば、研究より語学力を重視することになり、研究能力の低い教員を増やしてしまうリスクもあります。
大学の国際化は、教育や研究の質の低下のリスクにも注意しながら、徐々に進めていくべきです。大学の国際化は急激に進めるべきではなく、社会の変化と同じかそれより一歩先を行く程度の速度で行くべきだと思われます。影響を多角的に考え、バランスのとれた方策をとっていくことが重要だと考えます。
※掲載内容は2015年2月時点の情報です。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。