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2026.01.15

省庁の事業を点検し、結果を見える化する「行政事業レビュー」

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行政官と研究者が連携しやすい仕組みがあれば、より有益なものに

 EBPMの考え方が浸透したこともあり、現在は予算を取って事業化する前に、何を成果とするのか、どのように評価をするのかが以前よりも考えられるようになってきたように思います。しかし以前は、事業を始めてから成果指標を設定することも少なくありませんでした。

 たとえば、1993年のウルグアイ・ラウンドの合意によって、農産物の輸入自由化が進みました。これに対応するため、国内の産地は競争力強化を迫られ、国としてもその支援策に巨額の予算を充てたのですが、予算の多くは、いわゆる箱ものに使われています。

 農村に調査に行くと、ウルグアイ・ラウンド合意時の予算で建てられた施設を頻繁に目にします。競争力や生産性を高めるのに全く関係しないような施設もなかにはあり、今なお批判の対象となることもあるのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

 漠然とした目的を立て、成果指標も定めないまま予算ありきで事業が走り出すと、軌道修正できないまま予算を浪費するおそれもあります。そのような失敗を未然に防ぐためにも、EBPMは重要です。EBPMを踏まえた行政事業レビューは、国政における事業の進捗を見直す一端を担っているといえるかもしれません。

 ただ、行政事業レビューでコメントを出したあとは、官庁にお任せとなり、その後どうなったかまでは検証できていないのが現状です。私自身が担当したなかでも、追跡できる仕組みがあれば、より有益な情報を提供できそうだと感じる場面もありました。

 また、因果推論の手法自体は今後も発展していくと考えられますが、より効果的に活用するためには経営体や事業体レベルのミクロデータが求められます。このようなデータへのアクセスがより容易になれば、政策評価や施策の立案時に、より確かなエビデンスを得ることができるようになるかもしれません。

 一方で、研究者が自らの興味だけで研究してしまうと、行政官が本当に必要としている内容と噛み合わない場合があります。一研究者として、「こういう研究をしてほしい」という要望を聴ける場があればいいのにとも感じています。省庁と大学などの研究者がうまく連携できる仕組みを構築していければ、学術的な知見をもっと行政や社会に活かすことができるのではないでしょうか。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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