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2026.01.15

省庁の事業を点検し、結果を見える化する「行政事業レビュー」

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事業と効果の関係性を把握する「因果推論」の手法が発展

 EBPMやデータにより政策の効果を把握することに対して、以前よりも社会からの理解が進んでいるように感じます。背景には、「因果推論」の手法が、飛躍的に発展してきたことがあります。実施した事業とその効果との関係性をより的確に把握できるようになってきたのです。

 因果推論とは、粗くいえば、データを用いて「ある事象が別の事象にどのような影響を与えたのか、その大きさはどれくらいなのか」といった、原因と結果の関係を統計的に推定・分析するものです。行政事業レビューでは、設定された成果指標をもとに、進捗状況や目標達成率を把握します。近年は因果推論の手法が発展したことで、エビデンスを把握しやすくなり、行政事業レビューの精度や説得力を高める機会が増えてきているように思います。

 研究手法の発展には、テクノロジーの発展も欠かせません。これまでは「理論上計算できるはずだ」と言われてきたことが、コンピュータの進歩によって計算速度が顕著に上がり、自前のパソコンで容易に行えるようになりました。理論的には可能と言われていた因果推論の手法も、これにより業務で使えるようになったのです。計算速度が向上するにつれ、研究もより進むようになり、それによって、因果推論の手法はさらに進化していくと考えられます。

 私がこれまで関わってきた行政事業レビューは、大きいものから小さいものまで、事業の規模はさまざまです。なかには、事業の目的と成果目標・指標がかみ合っていないと思われるものもありました。

 たとえば、農畜産物の供給を安定化させることが目的の事業において、成果目標や指標が生産量の増加となっていたケースがありました。この事業の場合、生産量を増やすことではなく、供給量の変動をどの程度抑制できたのかが成果目標や指標となるべきです。また、生産性の向上を目的とする事業においても、成果目標や指標に生産量が設定されていることがありました。しかし生産性が向上すれば、必ずしも生産量が増えるわけではありません。

 このように事業によっては、何を目的として事業を行っているのかが、やや不明瞭になっていることもあります。役所内からは言い出しにくい部分もありますので、外部の立場から問題点を指摘し、組織内での共通認識を形成することを手助けしていきたいです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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