数年をかけて開発した金融心理尺度
では、具体的に、どのように尺度を作っていくのかというと、まず、一般の社会人を対象として、金融リスクの理論に基づいた質問によるインタビューを重ね、その内容を分析していきます。
私たちは、数年かけて、数千人にweb調査を行い、金融行動との妥当性がある金融心理尺度を開発しました。それが、「金融リスク認知尺度」、「個人的・社会的要因尺度」、「投資態度尺度」と、この3つの下位尺度で構成されている尺度です。
これらの尺度を基に、対象者の金融行動を測定していくのです。
例えば、金融リスク認知尺度の下位尺度には、「統制不能感」や「損失不安」という尺度が設定されています。この尺度に則った質問と、「まったく当てはまらない」から「非常に当てはまる」までのリッカート式の質問項目を用意し、その答えを数値化して統計分析します。
すると、ハイリスク・ハイリターン志向が強いと株式への投資意欲は強く預金への意欲は抑制されます。逆に、損失不安に関しては、それが高い人ほど株式への投資意欲が抑制され、預金への意欲が強いことが示されたのです。
つまり、こうした尺度で人を測っていけば、その人にどんな投資志向があり、どんな金融行動を起こすのかということも見えてくるわけです。
逆に言えば、「ハイリスク・ハイリターン志向」や「損失不安」という尺度が開発されず、性別や年齢のカテゴリーだけで考えていては、人の金融行動やそのメカニズムをより正確に捉えることはできないと言えるわけです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。