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「忖度する社会」、日本の特有性を理解することが重要

明治大学 政治経済学部長 教授 小西 德應

他国を知ることで知る日本特有の構造

 忖度も、私たちが意識せずに行っている日本特有の行動です。日本語はハイコンテクスト文化の言語といわれます。文脈の抽象度が高く、コミュニケーションにおいて、あうんの呼吸が必要なのです。例えば、来客に「暑いね」と言われたら、クーラーを入れるべきか、冷たいお茶を出したら良いのか、考えます。「暑いね」といわれれば「そうだね」で会話が終わる社会もあります。そうした社会では、クーラーを入れて欲しければ、そう言うのです。けれども、その人が言っていることを考えて、その意図を見つけていくのが日本社会です。これは、配慮ができる、空気が読める、あうんの意思疎通ができる、と肯定的に捉えられることが多かったと思います。そうできないと、少し前まではKY(空気が読めない)と否定的に捉えられていました。しかし、最近になって改めて問題視されているのは、これによって責任が曖昧になることがあることです。先ほどの例でいえば、「業績を上げろ」と社長に言われた部長は、その意図を忖度して課長に伝え、課長もまた忖度して係長に伝えます。いつの間にか、「仕事が終わるまで帰るな」が指示になります。さらに、この社長が全社員に向けて「サービス残業はするな」と訓示をしても、これは表向けの話で本音ではない、と社員たちは忖度します。しかも全員が「横並び」になることで、安心して自身の忖度を受け入れられます。ピラミッド型の指示命令系統に見えても、トップの指示で組織が一気に動くことはない。これが日本社会です。

 問題は忖度をするかどうかだけではありません。より重要なのは、そうした日本特有の思考や価値観と、それに基づく社会構造をしっかり認識することなのです。明治維新以降、日本は近代化を目指すために欧米の制度やシステムを取り入れてきましたが、それは制度を優先し、実態を無視したものでした。人々の意識や生活と乖離したところの社会制度が持ち込まれたわけです。そのため、欧米と同じやり方では本質的な問題解決はできないのです。問題解決のためには、まず、日本を正しく分析、理解することが必要です。とはいえ、これはとても難しい作業だと思います。私たちは、ふだん意識することなく、日本特有の社会構造の中で上手く生活しています。意識されることがないので、この社会構造は放置されてきたのです。しかし、意識するきっかけはあると思います。グローバル化が進む現代、他国を知ることで、自国を知る機会は増えています。例えば、英語では1から12までの数字が固有の名前を持っていることからわかるように、12進法で数える国があることを認識して初めて、日本にいる自分たちは10進法で数えているのだと気づきます。さらに、日本の場合は10進法と時計などでは12進法で数えていたつもりのところへ、無意識で2進法の数え方があり、1+1を10にしていることに気がつく機会でもあるのです。専門家の間でも、これから日本社会の構造を分析する作業が進展すると思いますが、個々人が自分たち自身を正しく理解することは、いま起こっている様々な社会問題を解決するためには、非常に重要だと考えます。

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