
2022.07.06
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
アジア各国で仕事をしている商社マンなどは、現地でよく、日本はどうしたいのだ、と聞かれるといいます。アジア各国の人たちにとって、日本は不気味な存在なのです。それは、日本の外交政策に、確固としたビジョンがないからです。日本人自身が、どうしたいのか、わかっていないからです。トランプ政権は、あれだけ罵り、脅威と緊張を煽った北朝鮮に対して、いまでは非核化を約束させ、東アジアに緊張緩和をもたらそうとしています。それは、アメリカにとってアジアは魅力的な巨大市場だからです。すべては、その市場に進出するための戦略であったのに対し、日本は何をしていたと言えるでしょうか。アメリカとマッチングしているつもりで戦略なく軍拡を続け、自らがアジアの脅威となっていくのでは、あまりにお粗末です。
アメリカが離脱したTPP11が発効するのは、日本にとって考える良い機会となります。日本が一人勝ちしようとするのではなく、アメリカ一辺倒の外交を見直し、アジアとの互恵を考えるチャンスなのです。そのためには、戦後日本の信頼を培ってきた平和憲法をベースに、広い視野でアジア各国と平和的な共存を図ることが重要です。そうしたビジョンの下、平等・互恵の経済的外交や文化的外交を進めるベきでしょう。
日本国内で暮らしていると、アジアや世界の情勢に無頓着になりがちですが、国民一人ひとりに、日本の置かれている状況や動きに、もっと関心をもってもらいたいと思います。すると、いま、世界で起きている様々な問題を繋げて考える観点が養われていくはずです。トランプ政権が北朝鮮の脅威を煽ったこと、安倍政権もそれに同調したこと、そのトランプ政権が東アジアに緊張緩和をもたらそうとしていること。そうしたことを繋げて考える観点をもてば、ことの本質が見えてくるはずです。すると、現政権に将来ビジョンはあるのか、そのビジョンは、私たちやアジア、世界を幸せにするものなのか。そうした将来ビジョンを描くためには、私たち一人ひとりが関心をもつことこそが重要であることもわかってくるはずです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。