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2018.04.18

イスラームの情報を「いらないボックス」に入れ続けていて良いの?

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イランでは女性も元気で楽しく暮らしている

山岸 智子 私がイランから帰って来たと言うと、「大丈夫だった?」とか「嫌なことなかった?」と聞かれることが多くあります。イランでは女性が抑圧されているというイメージが強いからでしょう。でも、現地の女性たちは決して泣いて暮らしているわけではなく、女性として人生を楽しむことにはむしろ積極的です。そして情に厚く、例えば、イランでの私の個人的な体験ですが、私に悲しいことがあって気持ちが沈んでいるとき、電話をかけてきた友人が、私の声が変だと気づき、すると1時間後には夫に車を運転させてやって来て、こういうときは1人でいてはダメだと言い、私を彼女の家に連れて行くのです。彼女の家では家族全員が私を慰める態勢で待っていました。私が、遠い日本から1人でやって来た女性だから特別気にかけてくれていたこともあるし、日頃から、悩んだり、落ち込んでいる友人がいれば、手を差し伸べるのが、彼らにとっては当たり前のことになっているのだと思います。また、イランでは帰依している宗教は何かと尋ねられることがあります。私は、怠け者の仏教徒だと答えます。すると、たいていは、どの宗教も求めるものは一緒だ。だから、それがイスラーム教でなくても構わない、と言われます。きちんとした宗教観をもっている人は、それがイスラーム教でなくても、自分の行いを正すものだ。だから信頼に値する、と彼らは考えているようです。人を自分たちと同じであるか違っているかで判断し、ときにはそれがイジメにも繋がる日本社会に比べると、彼らの方が、人を受け入れる気持ちがはるかに広いと感じます。

 また、これも意外に思われるのですが、イランでは女子が高等教育を受ける率が日本よりも高いのです。トップレベルの大学にも進学し、センター試験のような全国的入学試験でトップの成績が女性ということも珍しくありません。さらに、女子のフットサルは世界の強豪です。2015年のアジアカップでは優勝しています。また、映画の水準も高く、ベルリン国際映画祭や、カンヌ国際映画祭でも受賞しています。こうした優れた現代文化や、女性たちの元気な姿が日本ではほとんど取上げられないのは、大変残念なことです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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