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2024.12.19

「変動費」と「固定費」から見えてくる、収益性の管理法

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固変分解をするには、その企業のデータを細かく追う必要がある

 固定費に分類される減価償却費などは、ある製品から撤退したところで簡単に削減できるわけではありません。変動費と固定費の特性が明確に理解できていないと、全体の業績をさらに悪化させることにもなりかねないのです。

 需要があるかどうかの視点も大事です。先ほどの例でも、CをつくらなくなったリソースをAとBに割いたところで、売れずに在庫として残るのであれば意味がありません。そもそもCを100個つくる労力で、AとBを50個ずつつくれるとは限りません。Cに特化していた製造設備があるかもしれませんし、Cの製造のために長く勤めていた人もいるかもしれない。そういう人たちがAとBの作業に移ったところで、同じ労力で同じ個数を製造できるかはわかりません。

 変動費と違い、いったん増えた固定費を減らすのは大変です。固定費のなかでも、広告宣伝や研究開発にかかる費用など、比較的短期でも動かしやすいものをマネジド・キャパシティ・コスト、正社員の人件費や購入した工場や産業用機械の減価償却費など、長期間動かせないものをコミテッド・キャパシティ・コストと呼びます。このうち、とくに後者には注意が必要です。正社員として雇用した人員を削減するのも、導入した機械設備や工場などを現金化するのも、苦難を伴う部分が大きいからです。

 近年、話題にもなりましたが、日立製作所は、さまざまなメーカーが手がけ、すでに競争が過当気味となっている家庭用エアコンから撤退しました。しかし単純に工場のラインを止めるという話ではなく、事業そのものを売却しています。すなわち固定費ごと、外部の企業に移管させました。コスト構造は企業ごとに大きく異なるため、不採算製品から撤退するかの判断も、方法も、企業ごとに異なっていきます。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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