Meiji.net

2026.02.26

異文化チームにおける価値創出を実現する次世代型グローバルリーダーの条件 ― 国際比較研究にもとづく「知識型リーダー」から「共創型リーダー」への転換 ―

異文化チームにおける価値創出を実現する次世代型グローバルリーダーの条件 ― 国際比較研究にもとづく「知識型リーダー」から「共創型リーダー」への転換 ―
  • Share

変動と不確実性が増す現代、社会課題は国境を越えて複雑に結びついています。こうした環境で求められるのは、異文化の壁を越えて協働し、新たな価値を創出できる「共創型グローバルリーダー」です。明治大学経営学部では、国際共同研究やオンライン協働授業を通じて、学生の探究力や問題解決力を育てる取り組みを進めています。本記事では、その成果と育成の方向性を紹介します。

VUCA時代の“新たなグローバルリーダー像”とは

永井 裕久 いま私たちが生きる国際社会は、まさにVUCA時代のただ中にあります。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を組み合わせた言葉です。社会や市場の動きが急激に変化し、先行きは読みづらく、複雑な要因が絡み合って事象の因果を把握することすら難しい。このような環境が、国や地域を問わず企業や社会を取り巻いています。

 昨今、地政学上のリスク(国際紛争、外交摩擦、関税制限等)の高まり、環境問題の深刻化、経済格差拡大、生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進展といった複合的課題が同時並行的に進行しています。ウクライナや中東情勢をはじめとする国際的な対立に加え、気候変動や自然災害による影響は、もはや「遠い国の出来事や問題」ではなく、グローバルシティズン全体に直接的な影響を及ぼす重要テーマになっています。

 こうした問題は、いずれも一国のみの努力で解決できるものではありません。国際社会においては、自国の利益を越え、客観的な事実を共有したうえで、関係するステークホルダーとの合意形成を図り、協働して取り組む姿勢が不可欠です。だからこそ、求められるグローバルリーダー像もこれまでとは大きく変わってきています。

 今日のグローバルリーダーシップとは、トップダウン型にみられる「強力なカリスマ的リーダー」ではなく、対話を通して異なる価値観や発想を持つ多様なメンバーとの信頼関係を築き、共通目標を達成できる「共創的グローバルリーダー」であると考えます。相互理解を深め、多様な価値観を束ねながら新しい価値を創出し、持続可能な形で成果を達成する力が求められているのです。

 私はこれまで、多国籍企業で働くグローバルマネジャーを対象に、異文化組織行動論の立場から研究を続けてきました。具体的には、「文化的背景にもとづく価値観や志向性が、グローバルリーダーのコミュニケーションや対人行動にどう作用し、パフォーマンスにどのように影響するのか」、「文化的障壁から生じるギャップやリスクのマネジメントに必要なグローバルリーダーシップコンピテンシー(行動特性)は何か」といったテーマに取り組んでいます。

 そこで明らかになってきたのは、グローバルリーダーとして成果を上げるためには、国際経営に関する専門知識や語学力、海外経験といった“外形的な要件”以上に必要な能力が存在するということです。それは、文化的背景の異なる相手との合意形成に至る道筋を立案し、得られた結果を経験として次回に反映できる学習能力です。

 さらに、こうした行動能力や経験学習を支える基盤として、「グローバルマインドセット」(異文化を柔軟に理解し活用する認知的能力)と、「文化的自己効力感」(異文化環境で効果的に行動できる自信)という心理的要素が不可欠です。これらの要素が高いほど、文化の壁を越えた協働においてより大きな成果を生み出せると考えられています。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Share

あわせて読みたい