
金融政策や財政政策、貿易政策といった経済政策は、時の政権や社会状況によって決定されるため、政権交代時などには不確実性が高まります。政策不確実性の高まりは、企業の投資や雇用、家計の消費に負の影響を与えるなど、社会に大きなインパクトを与えることが明らかになっています。そんな政策不確実性を計測するための、大規模言語モデルを利用した指数の開発についてご紹介します。
政策不確実性が高まると、意思決定を遅らせ様子を見る傾向が高まる
2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げを実施しました。2025年4月には、アメリカのトランプ大統領が日本に対し、24%の相互関税を発動すると発表。2025年度には基礎的財政収支を黒字化するとの目標を日本政府は掲げていましたが、達成が困難な見通しとなっています。
経済がグローバル化し、他国の政策により自国の経済が決まってしまう局面が増えてきました。世界的に経済成長へと向かっていた1990年代までは、近しい方向性のものが多かった先進諸国の国策も、2008年の世界金融危機を境に、自国だけ損をしないように図ろうとする動きも増えてきています。政策不確実性をいかにコントロールしていくかが、ますます重要になってきているのです。
政策不確実性とは、大きくは政策との関わりで高まる経済の先行き不透明性のことを指しています。人々は従来と異なる環境に置かれると、政策決定者が考えていた以上に過激な反応を起こすことも少なくありません。それらを定量化するためにつくられた指標が、政策不確実性指数です。その政策によってどんな効果が発生するのかなどを総合的に捉える指標にもなっています。
政策不確実性が高まると先行きが読めないため、企業であれば、もう少し状況が明らかになってから設備投資や雇用の決定をするなど、意思決定を遅らせ様子を見る傾向が高まります。結果として良い方向に進むケースもあるでしょうが、好機を逃すことにもなりかねません。雇用が控えられれば、我々の生活にもダイレクトに影響が出てきます。また、家計も企業も現金を保有しておこうとする予備的貯蓄効果が高まります。
このように政策不確実性は景気とも深く関係し、景気を捉えるための重要な指標にもなるので、正確に計測することが望まれます。しかし、政策はお互いが関連し合っています。金融政策として日銀が日本の国債を買うと、今度はそれを税金からどう返していくのか、財政政策が絡んできます。すべて切り離せないため、各政策について見ながらも全体を考える必要があり、そこに計測する難しさがあります。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。