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2022.04.13

都市農業は、日本農業の実情を知るきっかけになる

都市農業は、日本農業の実情を知るきっかけになる
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人の食料を支えるという重要な農業ですが、現代の日本では、農業に関する知識や関心が低いのが実情です。都市近郊に立地する本学の黒川農場は、農業に関わる人材を育成する場であるとともに、市民が農業に関心を持つきっかけの拠点となる大きな可能性も秘めています。

日本の農業に必要なのは新しい発想のできる人材

岩﨑 泰永 農業がとても重要な産業であることは誰もが知っていると思いますが、いまの日本の農業の実情を理解している人は少ないのではないかと思います。

 例えば、マスコミなどで、農業従事者の高齢化や後継者不足が大きく取り上げられることもあり、日本の農業生産は不足するとか、先行きが不安というイメージを持っている人が多いと思います。

 しかし、実際は、日本の農業生産物は必ずしも不足しているとは言えません。

 例えば、イチゴなどは、より美味しいもの、より甘いものを目指して品種改良が盛んで、産地ごとにブランド化を進めています。それは、放っておけば売れ残り、価格が低下してしまう市場の中で、なんとかパイを取りたいという努力の表れなのです。

 こうした努力や工夫は、イチゴに限らず、お米や他の野菜などでも同じです。

 一方で、世界に目を向ければ、本当に食料が不足している国や地域も多く、そうしたところに、今後、日本の農業の技術や品種に期待されることは大きいのです。

 日本の農業人口の減少は事実ですが、だからといって、日本の食料が不足するとか、将来が不安というのは実情を知らないイメージにすぎません。

 もちろん、手をこまねいていては、農業人口は減り続け、それこそ、食料が不足する事態になってしまうでしょう。そこで、ICTやAIを活用した農業の大規模化や省力化の技術開発に力が注がれています。

 もちろん、それはそれで必要なことではありますが、それだけでは、生産者の減少に対する対処療法に過ぎなくなってしまいます。

 根本的には、新しい発想で、世界および国内の食料生産の安定化を進めることができる人材を育成することが重要です。

 つまり、直接的な作業者にもまして、農業の経営者、技術開発に取り組む研究者や技術者、斬新な施策を打ち出すことができる行政の担当者を育成することが急務であると、私は考えています。

 そのような人材を育成するには、農業に直接関わっていない市民の方々に、農業に関する知識や関心を深め、関心の高い人を増やし、農業分野を志向する人の母数を増やすことが重要だと考えています。

 そのためには、大学の農学部のような高等教育機関の果たす役割は大きいと言えます。

 その意味で、本学の黒川農場は生産圃場から加工施設、研究設備を備えた本格的な農場施設であり、都市近郊という立地でもあり、学生をはじめ、近隣の住民や生産者の皆さんに、様々な機能を提供できる大きな可能性を持っていると考えています。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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