学びを加速させるアドバイス自分の中の引き出しを増やし、ひらめきを生む3つの態度
教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【38】
建築設計をはじめとするデザイン分野は、無から有を生み出すアートとは違い、既存の知識や経験を組み合わせることで成立します。これはデザインに限らず、課題解決や新しい発想が求められるすべての分野に共通することでしょう。
自分の知識や経験をブレイクスルーにつなげるために、私が大切にしている3つの態度について紹介したいと思います。
1つ目は、目の前に与えられたことにとどまらず幅広く物事を知り、日頃から自分の「引き出し」とその中身を増やしておくことです。
私の専門である建築は、材料、構造、意匠、設備や環境、都市計画などさまざまな分野の知見が集合することによって成り立っており、そのうちどれかを専門的に身につける場合も、全体を見渡す幅広い知識を持っていることがとても重要になります。建築に限らずどのような分野であっても、ひとつの専門だけを突き詰めるだけでブレイクスルーを起こすことは難しい時代です。趣味や遊びを含め、とにかく興味があることについて一度自分で調べてみると、それまで知らなかったいろいろな知識が頭の中に入ってくるでしょう。そのようにして引き出しやその中身を増やしていくと、意外な場面で役に立ったり、思わぬひらめきにつながったりすることがあります。
私の場合、地震時の建築物の揺れを抑える研究で、揺れを打ち消す振動を発生させるデバイスを作る必要があったのですが、そこで趣味のオーディオの知識が役に立ちました。むしろ、オーディオで音を出す仕組みが頭の中にあったからこそ、この研究を思いついたのかもしれません。
とはいえ、人が自分から知りたいと思える範囲には限界がありますし、そもそも全く知らないことに関しては興味の持ちようがありません。そこで2つ目、多くの人とコミュニケーションを取ることが大切になります。
家族や友人をはじめ多くの人と対話することを習慣づけておくと、自然と多様な知識や視点に触れる機会が多くなるでしょう。少しでも知ることで「調べてみよう」という動機が生まれ、自分だけでは増やせなかった引き出しやその中身を充実させることにつながります。近年は対面でコミュニケーションを取る機会が減少していますが、やはり対面だからこそ得られる情報や気づきがあるのも事実です。時にはデジタルツールを離れ、直接人と関わる機会を持つことも重要でしょう。
3つ目は、与えられた課題を自分事として捉え、主体的に取り組むことです。勉強でも仕事でも、誰かから与えられた課題に対して興味を持てないことがあるかもしれません。しかしそんなときこそ片手間でこなすのではなく、経験や学びにつながるはずだと前向きに捉えてみることが大切です。そこに面白さを見出すことができれば、そこからがあなたの成長点になるでしょう。
これら3つがすべて揃っていれば、引き出しとその中身は日々の積み重ねで確実に増えていきます。突破口となるようなアイデアが「ふと降りてくる」瞬間は、そのようなインプットを普段から欠かさず、課題について考え続けていることではじめて訪れるものではないでしょうか。
社会に出ると、必ずしも自分のやりたいことや楽しいことばかりに取り組めるわけではありません。そのような中でも、「これは自分の引き出しを増やす機会だ」と捉え、主体的に取り組めるかどうかが重要です。そうした姿勢を持てる人こそが、結果として学びを深め、人生を豊かに楽しむことができるのではないかと考えています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
