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社会で感じた「健康によい」のギャップ
2024.06.19

人生のターニングポイント社会で感じた「健康によい」のギャップ

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【71】

私は「運動はみんな好きだし、健康によい」と思いながら育ちました。子どもの頃から運動が大好きで、大学はスポーツ科学の学部に入りました。

ところが、卒業して社会人になると、当たり前のことですが、誰もが私のように考えているわけではないとあらためて気がつきました。社会には運動が嫌いな人もたくさんいて、「健康を代償にしてでもバリバリ仕事をするべきだ」というような価値観もあったのです。

健康に関する社会の感覚と私の感覚には、驚くほどギャップがありました。同時に、運動・身体活動、食事をはじめ、健康について研究ではさまざまな良いことが明らかにされているのに、あまりにその情報が一般の人に普及・啓発されていないと感じました。

また、テレビ番組で「バナナが健康によい」といわれたら、翌日にはスーパーマーケットからバナナが忽然と消えてしまうというような状況にも疑問を感じていました。

もちろん、基本的にはバナナを食べて不健康になることはありませんが、人々が驚異的な健康効果を期待して売り場に殺到している場面を想像すると、他にも健康によい食べ物はたくさんあるのになあ、と思うのです。

このように、ある種の情報を鵜呑みにするようなところも含めて、健康情報という大切な情報が、必要なところに適切に伝わっていないということが、自分の問題意識になっていきました。

そして、それを解決する方法を考えた場合、自分が研究や情報を正しく理解し、適切かつ効果的に発信できる人になれると良いのではないかと思い、社会人から大学院へ入学しました。

私が大学院に入った当時は、ソーシャルメディアなどでの発信や活用が今ほど活発ではなく、その意味では、ヘルスコミュニケーションという私の研究分野もまた、社会の状況にあわせて刻々と変化しており、私の研究も発展途上です。

ビジネスパーソンのみなさんへのメッセージとしては、もし社会で課題を感じ、それを解決する手段として研究に興味を持たれたとしたら、いつでも研究は始められるということです。今では、自分の生活や仕事にあわせてカスタマイズしながら研究できる環境も整いつつあります。

学部生の頃や若い頃から研究に携わることも素晴らしいと思いますが、社会人を経験したことで見えてくる社会課題もあり、それを元に研究者を志すことも良いことだと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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