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世界の多様性と先見性を学んだ、留学生との交流

小室 輝久 小室 輝久 明治大学 法学部 教授

考え方や価値観が変わるほどの出来事に遭遇したら、それは成長へのチャンス。明治大学の教授陣が体験した人生のターニングポイントから、暮らしや仕事を好転させるヒントを探ります。

教授陣によるリレーコラム/⼈⽣のターニングポイント【3】

私の生き方を大きく変えてくれたのは、私の授業を履修していた、留学生たちとの交流でした。

ある日の授業中、ブラジル人女子留学生が「歯が痛いので歯科へ行きたい」と言い出したのです。日本人なら授業の間は我慢するのでしょうが、彼女が「授業より歯痛の治療が先決」と判断したことに驚きました。

また彼女はポルトガル語、イタリア語、英語、日本語に堪能なので、東京のテレビ局で翻訳や通訳のアルバイトをしていました。ですからてっきり、卒業後には就職先として人気だったテレビ局に行くものだ、と私は思っていたのです。

しかしその留学生は「テレビ局には未来が見えない。私は動画配信サービスか巨大ECサイトで仕事をしたい」と言います。まだ外国の動画配信サービスが日本に上陸する前のことでした。

さらに別の、米国や欧州からの留学生に、日本人が好きな大岡裁きの「三方一両損」の話をした時、何と大きな笑いが起こりました。「裁判をやったのに、勝者と敗者がいないのはありえない」と言うのです。

そんなことがいくつか重なり、留学生たちの感性やものの見方が、日本人の自分とは異なるばかりか、より鋭いものを含んでいるのでは、と意識するようになりました。

そして「多様性のある考え方を、留学生から日本人学生に伝えてもらいたい」、「日本人学生は海外に出て、新しい考え方に触れてほしい」と願うようになったのです。

国際交流担当の副学長に任命された今も、国際的な感覚を幅広く大学に取り入れることを自分の使命と考え、交流に取り組んでいます。

日本は、経済も為替も下降気味で、これまでのやり方では急回復が難しい可能性があります。今こそ、世界から様々なことを学び、自分自身はもちろん、会社や組織を未来に向けアップデートする必要があるのではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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