
2021.04.07
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
ときに人生の指針となり、仕事のヒントとなり、コミュニケーションツールの一助となる「読書」。幅広い読書遍歴を誇る明治大学の教授陣が、これからの社会を担うビジネスパーソンに向けて選りすぐりの一冊をご紹介。
吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(岩波文庫・1982年)
丸山眞男『日本の思想』(岩波新書・1961年)
『君たちはどう生きるか』は、近年漫画化され、大ベストセラーとなって脚光を浴びた吉野源三郎氏による小説です。
15歳のコペル少年が多くの悩みに直面しながら精神的に成長していく様子が描かれています。若いときに読むと人生観が変わり、「このままじゃいけない」と衝撃を受ける本です。
政治学者・丸山眞男氏による『日本の思想』は、高校3年生のときに初めて読みました。
日本人の内面生活における思想の入り込み方を構造的な視角から追求し、日本の思想のあり方を浮き彫りにした本ですが、高校生の私には難しい本でした。5行読んでは3行戻り、3ページ読んでは2ページ戻り。泣きながら読みました。
その後、大学に入って少し勉強が進み、3年生の時の自主ゼミでこの本がテキストに取り上げられると、そのときは読み切れたんです。うれしくて思わず泣きました。
よく丸山氏は「民主主義は永久革命だ」と言われていましたが、この本からも民主主義には終わりがないのだというメッセージが伝わってきます。
また、ひとつひとつが孤立しているタコツボに日本の文化をなぞらえた「タコツボ型」の比喩も印象的です。
共通の基盤を持たないままに組織や分野が専門化し、横の意思疎通が困難になる状態を論じていますが、これは現在の日本社会にも当てはまり、タコツボのままではいけないという思いにさせられます。
毎日を慌しく送るビジネスパーソンの方に、「たまには原点に立ち戻って考えてみないか」という思いを込めて古典的なこの2冊をおすすめします。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。