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暴力化する現代社会への歴史学からの提言 ―江戸時代から幕末の社会動向と吉田松陰の位置―

須田 努 須田 努 明治大学 情報コミュニケーション研究科長 情報コミュニケーション学部 教授

「思考を継続せよ」―暴力を抑止する力

須田努教授 ――私たちは、暴力を発動させないために、社会の暴力化を抑止するために何が求められているのでしょうか。

国家権力はそれそのものが暴力装置です。誤解を恐れずに言えば、権力が一元化した暴力装置は、徳川幕府がそうだったように社会の安定のために必要なものと言えます。国家権力が解体・崩壊すれば社会は混沌に陥ります。ソ連邦解体後の民族紛争などが端的な例でしょう。したがって私たちは巧妙かつ賢いやり方で国家権力をコントロールしていく必要があるのです。
暴力の発動の根底には、社会にひろがる閉塞感と思考の停止があります。幕末から20年遡る天保という時代は、若者にとって将来の展望を持てない息苦しい社会となっていました。これが幕末・ペリー来航で変化したのですが、閉塞状況が長く続いたため、若者たちは思考することをやめて、最も簡便な自己主張の方法である暴力を選択してしまいました。その結果、血塗られた「暴力の時代」が現出しました。思考を止めてしまった人間は暴力化し、現状をやすやすと受け入れてしまいます。教養を深め思索を重ねることが現状を相対化し批判する力となります。換言すれば、一人ひとりが「考え続けること」、その継続が、現状を批判し、社会の暴力化を抑止する力になると考えています。「思考を継続せよ」、それを社会への提言とします。

 ――本日は、ありがとうございました。

※掲載内容は2015年4月時点の情報です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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