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夫婦別姓、生殖補助医療と人権問題 ―求められる『多様な家族』の幸せを保障する法の整備―

明治大学 法学部 教授 石井 美智子

変わりゆく家族のあり方

 ――そもそも、家族とは何かということが問われているのではないでしょうか。

家族は、構成するメンバーが支え合い助け合う最小単位のコミュニティです。その家族のあり方が変わってきているのです。
たとえば、渋谷区は同性のカップルを「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行することを検討しています。米国連邦最高裁は昨年、同性の婚姻を認めない連邦法を憲法違反との判断を下しました。ヨーロッパの多くの国では同性婚が認められています。日本では、同性の婚姻は認められていませんが、2013年に最高裁は、女性から性別変更した男性が、妻が提供精子によって出産した子の父であると認めました。
家族は、男女が二人の間の子どもを育てる場という画一的なものではなくなってきています。マイノリティーの家族のあり方を許容することは、成熟した社会に必要とされることと思われます。

遅れている日本の生殖補助医療の法整備

 ――家族のあり方の変化は、先生が専門とされている生殖補助医療に関する研究とも関わってくるのでしょうか。

不妊治療の一環としての体外受精や代理出産など、生殖補助医療は急速に進展しています。そこには安全性や倫理性など様々な問題がありますが、日本には、学会のガイドライン等の規制しかなく、生殖補助医療に関する法律が整備されていないことが大きな問題です。
今年、遺伝的に2人の母親をもつ子が生まれることになる新しい生殖補助医療が英国で、世界で初めて認められました。細胞の中でエネルギーを造り出す「ミトコンドリア」の遺伝子は母親からのみ子に受け継がれます。このミトコンドリアの遺伝子に異常があるために「ミトコンドリア病」の子どもが生まれることがあります。承認されたのは、それを防ぐために、ミトコンドリア病の女性の卵子から核を取り出し、健康な女性の卵子の核と交換する技術です。これによって3人の親の遺伝子を受け継ぐ、自然界には存在しない人間が生まれることとなります。この技術を、英国は、2008年の法改正から議論を重ねて今年国会で承認しました。その判断の良否はともかく、生殖に係る技術の進展に対する規制の仕方には見習うべきものがあると思います。
日本は、生殖補助医療の先進国で、精子提供、卵子提供や代理出産も行われており、「父」は誰か「母」は誰かが問題となる事件も起きています。ところが、法整備がされていないことが問題です。ここへきて法案提出の動きもありますが、先行きは不透明と言わざるを得ません。
子どもの福祉のためには、第1の保護者である「親」が誰かということが明確でなければなりません。生殖補助医療の進展が家族のあり方を変えていく中、生まれてくる子どもの人権を守るためにも法整備が求められます。そもそも法律は、上から押し付けられるものではなく、自分たちで作って自分たちを守るためのものです。

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