短期的な解決に向けた備蓄米の放出が遅れ、進まなかった制度の問題
2025年5月に農林水産大臣が小泉進次郎氏に代わり、備蓄米が店頭に並ぶようになって、ようやく事態は収束に向かっています。備蓄米の放出自体は3月半ばから始まっていたにもかかわらず、市場になぜスムーズに流通しなかったのか。そもそも100万トンある備蓄米を米の価格が高騰した昨年8月から出しておけば、こんな騒動にはならなかったはずなのに、なぜそうならなかったのでしょうか。
もともと備蓄米は、大凶作による不足を想定したものです。今回の場合、価格が高騰したものの、全く手に入らないわけではありませんでした。従来の備蓄米の制度では、これぐらいの状況だと出せないことになっていたため、ルールを改正する必要があり、その対応で出遅れてしまったわけです。
しかも3月半ばから入札で備蓄米を販売した先は、JAなどの集荷業者です。そこから大量に仕入れて精米をする卸売業者や、小分けにして袋詰めをする仲卸業者などを経て、小売業者に届くまでの流通ルートが非常に長かったため、結局は消費者の手に渡らない事態が続きました。
JA側も、あくまで卸売業者からの注文を受けてから出荷する立場です。待っていたけれどもあまり注文が来なかったとか、卸売業者の倉庫にも限界があるので少しずつしか出せなかったとか、さまざまな理由があるのでしょう。しかし結果的に、速やかにスーパーに並ぶようにして高騰した米の価格を下げるという目的は果たせず、この政策は上手くいかなかったと言わざるを得ません。
その後、小泉大臣に交代したのを契機に、随意契約で小売店に直接、販売するルートへと舵を切ったところ、3日ほどで店頭に米が並んだところもありました。やはり発信力のある小泉大臣にはメディアも注目します。社長と会談したり社名を挙げたりすることで、ドン・キホーテが先かイオンが先かといったような競争が起こります。一方、卸売業者は報道もされず、消費者と直接接していないこともあって、必死さがやや足りなかったように感じます。
入札の備蓄米を放出しても下がらなかった価格が、随意契約で小売業者に売って下がる兆候が見えてきたのは、やはり誰かがストックしていた面もあるのでしょう。小泉大臣は「米の輸入を躊躇しない」と発言しており、溜め込んでいる米を手放さないなら輸入も辞さないという構えを見せています。9月になれば新米が出てきて古米の価格が下がるので、値崩れする前に溜め込まれた米はさらに市場に出てくると思われます。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。