Meiji.net

2021.01.13

動物の移動や行動がわかると、効果的な環境保全もわかってくる

  • Share

動物の移動や行動を知るためのバイオロギング

 従来、動物の空間分布や行動に関する情報は、主に観察によって得られています。しかし、人による観察では時間的にも空間的にも限界があります。365日、24時間、観察し続けることは、まず無理です。そのため、動物の空間利用については、これまで断片的な情報しか得られていませんでした。

 そこで、近年、用いられるようになってきたのが、位置を記録するGPS端末や、体の動きを記録する加速度センサーを内蔵したデータロガー(小さな記録計)を動物に取り付ける、バイオロギングという手法です。

 このデータロガーを一定期間、動物に取り付けて回収し、解析すると、その動物が、いつ、どのように移動しているのか、また、いつ、どのような行動をしているのかを知ることができるのです。つまり、その動物の生き方がわかってくるのです。

 さらに、データロガーによって収集した膨大な行動データを分析し、統計モデルとして記述することで、その動物の生息分布や移動経路を、環境情報のみから推定することが可能になります。

 すると、例えば、なんらかの工事などによって環境が変わった場合に、動物の分布や個体数に及ぼす影響を予測することができるわけです。このような手法は、大規模な事業開発などと関連した、環境アセスメントを実施する際にも活用できます。

 また、動物の時空間動態を捉える技術や手法は、農作物などに被害を与える野生動物の防除手段を考えるうえでも役立ちます。

 例えば、農村をぐるっと網などで囲えば、動物による食害を防ぐことができるでしょう。しかし、そんなことは経済的に現実的ではありません。この点において、動物の好みの場所や移動パターンがわかれば、全体を囲わなくても、より効率的かつ効果的な防除対策を考案することが可能になるわけです。

 一方、保護区を設定するような場合も、動物たちの好みの場所や行動を知ることで、生物にとってより重要な環境を生物目線で選定することができます。

 動物の行動や移動の特徴を知ることは、人と動物たちの共生や、生物多様性保全に繋がっていきます。つまり、生態系サービスや資源のサステナビリティを考えれば、それはまた、人にとってもより良い環境、より良い街づくりに繋がっていくわけです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Share

あわせて読みたい