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長生きリスクを、長生きハッピーにするために

明治大学 商学部 准教授 藤井 陽一朗

長生きリスクの分析は始まったばかり

 世界の多くの先進国は、少子高齢化の傾向にあります。そのなかで、日本は各国よりも15~20年先を行っています。すなわち、日本の状況こそ、人類が初めて経験する状況なのです。

 そのため、各国の保険分野の研究者たちは、日本の対応に関心を寄せ、注目しています。

 しかし、実は、平均年齢が80歳を超えるような社会に上手く機能する制度設計に必要なデータは、まだ不十分なのが実情です。

 例えば、長生きリスクには、金銭面と健康面の相互関係があると述べましたが、実は、高齢者の健康についてのデータの蓄積がなく、ここは、まさに未知の領域になっているのです。

 例えば、高齢者の病気の罹りやすさや、同時罹患の起こりやすさなどの確率の推定は、いまはまだ困難ですし、若い頃から不摂生な生活で生活習慣病などを発症した人と、規則正しい生活を保つことで健康を維持した人との推移や差異も、まだ分析が不十分です。

 すると、生活習慣によって変わる健康面が、金銭面にどう影響するのか、長生きリスクとして、その相互関係を正しく捉えることはできないのです。

 もちろん、そのような分析を待たなくとも、人々はそれぞれに長生きリスクと向き合い、それに備えた行動もとっているでしょう。

 それに対して、私たち研究者は、リスクを分析に耐えられるように、その意味を特定する作業とともに、数理モデルなどを構築して、人々がどのような予防行動をとるべきなのかを分析し、さらに、実験経済学の手法を用いて、個人の将来への認識、嗜好、不確実性に対する態度の測定を行っています。

 すなわち、リスクの確率がわからない不確実性の中で、人々はどういう意思決定をして、どういう備えをしていくことが考えられるのかを研究することが、私たちの先端トピックの1つになっています。

 その知見を活かすことが、政策提言や教育分野への反映に繋がるものと考えています。

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