なぜ感情がないロボットの「謝罪」を受け入れるのか?
他にも、社会においてロボットの振る舞いが人の行動を変容させる例として、「謝罪」の効果についての研究が挙げられます。
人間が失敗するように、ロボットもまたタスクの最中に失敗することがあります。たとえば配膳ロボットは、人に囲まれた複雑な環境で作業を行いますが、周囲の状況が刻々と変化するため、100%の精度で動作することは困難です。
そこで私たちは、ロボットが失敗した際にどのように振る舞えば人間に受け入れられるのかを検証しました。人間同士でよく行われるリカバリーの方法のひとつに「謝罪」がありますが、果たしてロボットによる謝罪でも効果はあるのでしょうか。
実験の場面を想像してみてください。配膳ロボットがトレーに乗せた料理を落としてしまいました。当然、人間のお客さんは怒ります。これまでの研究で、ロボットも謝罪をしたほうが失敗を許容してくれることが分かっています。私たちの研究では、失敗した1台のロボットだけでなく、別のロボットが寄ってきて一緒に謝罪した場合には、謝罪がより受け入れられやすくなるという結果も得られました。さらに興味深いのは2台目の振る舞いです。黙って片付けを手伝うだけでは評価は上がらず、謝ってから片付ける場合に最も許容度が高まったのです。
これは一見、当たり前のようですが、実際にはロボットは「失敗して申し訳ない」という感情や「悪いことをしたら謝るべきだ」という義務感から謝っているわけではありません。プログラムされた動作を実行しているにすぎないのですから。にもかかわらず、人は相手がロボットであっても人間と同じように、謝罪されると失敗に寛容になり得るのです。これはよく考えると奇妙であり、同時に非常に面白い事実だと思います。
ソーシャルロボットは、設計次第でさまざまな人に平等な機会を提供できる存在になり得ます。人間の代替というより、人間の活動を支援し、生活をより豊かにする役割を果たすことが期待されます。その実現のためには、言語モデルの進化だけでは解決できない現実社会特有の課題を一つひとつ検証しながら取り組んでいくことが大切だと、私は考えています。
人とロボットが共に暮らす未来を考えるとき、向上させるべきはロボットの「賢さ」だけではありません。ヒューマンロボットインタラクションの見地から、人間の心を理解してロボットの設計に反映させることもまた極めて重要なのです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
