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2026.04.02

運動中の体で何が起きているのか? 血流が支える酸素のやりとりから読み解く

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活動中の筋肉の血流反応を非侵襲的方法で明らかに

 DCSとは、簡単に言えば「光を使って血流の速さを測定する技術」です。赤く見える近赤外光を身体の特定部位に照射すると、血液中を流れる赤血球がその光を散乱させます。赤血球の移動速度が速いほど、散乱した光子の数や分布は時間とともに大きく変動します。この変動、いわば光の“ゆらぎ”を高精度で捉えることで、赤血球の移動に基づく指標を用いて局所の血流を定量的に評価することができます。

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Matsushita et al., (2025) ICMxより引用、一部改変

 このDCSシステムの大きな特徴は、そのコンパクトさにもあります。MRIのような大型装置とは異なり、身体に直接装着するセンサー部分は手のひらに収まる程度の大きさです。計測時には光を遮るための暗箱とパソコンがあればよく、医療現場で一般的に使われているカートに一式を載せて移動できるほど手軽です。この可搬性の高さは、実験室だけでなく、より実践的な運動環境での測定を可能にします。

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DCS-NIRSシステムによる計測の様子

 私たちはこのDCSを用いて、日本の研究チームとして初めて「活動中の筋肉における局所的な血流反応」を報告しました。さらに、近赤外分光法(NIRS)と組み合わせることで、血流と酸素代謝を同時に評価できるDCS-NIRSシステムを開発し、国内で初めてその計測に成功しました。

 NIRSは以前から使われてきた手法ですが、酸素化の程度はわかっても、酸素がどの程度供給され、どれだけ消費されているのかまでは把握しにくいという課題がありました。DCSを組み合わせることで、血流量の情報が加わり、測定部位の酸素代謝率まで推定できるようになったのです。これにより、酸素の供給と消費の関係を一体として捉えることが可能になりました。

 また最近では、呼吸に関わる肋間筋(あばらの筋肉)の血流を、DCSを用いて非侵襲的に測定することにも世界で初めて成功しました。

 運動時、特に高強度の運動を行うと血圧は上昇します。心臓から送り出される血液量が増えることに加え、末梢血管の内径が変化することが大きく関与します。血管が収縮すれば、同じ血流量でも血圧は高まります。これは、ホースの出口を指で押さえると水の勢いが強くなるのと同じ原理です。

 高強度の運動中、体内では血流量を増やす仕組みと、血管を収縮させて圧を高める仕組みが同時に働いています。この血管収縮を主に担っているのが、自律神経の一つである交感神経です。運動強度が高まるにつれて交感神経の活動が活発になり、末梢の血管が収縮します。こうした微小循環レベルにおける循環調節の実態を実際の筋活動中に非侵襲的に捉えられるようになったことは、運動生理学にとって大きな前進だと考えています。

英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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