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AIがビジネスのインフラになる

櫻井 義尚 櫻井 義尚 明治大学 総合数理学部 教授

AIが有能な秘書になる「意志決定支援システム」

櫻井 義尚 最後にAIの適用可能性についてお話しようと思います。

 これまでお話してきたAIは、囲碁とか、画像分類とか、特定の業務に限定していることで可能になっています。つまり、AIに学習させるデータを絞り込み、それによって特定の業務を非常に効率化させるのです。しかし、この絞り込みができないことも多く、現在のAI技術では、完全な自動化が困難なものや、実用的な精度で予測や分類などができないものが多くあります。

 一方で、AIの研究には、意志決定支援システムがあります。人が関わらないで済むように自動化し、効率化を目指すのではなく、人が関わる意志決定をAIによって支援しようという研究です。人間と機械で得意とする事が異なるので、協力することで、より高度なことを実現できるのです。

 私がたずさわっているのもこうした研究ですが、実は、こうしたシステムは、すでに私たちの身近で活用されています。

 例えば、インターネットで、なんらかのニュースや画像、動画、商品などを検索すると、以後、検索したアイテムに関連する情報が、いわゆる「おすすめ」として提示されるようになる経験を多くの人がしていると思います。これは、レコメンダーシステムと呼ばれるものです。

 このとき、AIは、なんらかのアイテムに興味を示した個人のデータを、インターネット・ユーザー全体の収集データと比較検討し、その個人がそのアイテムに行う評価を計算して、次の選択を予測するのです。

 つまり、「おすすめ」は、その個人の次の選択という意志決定を助けるための情報を、AIによって表示するシステムなのです。

 このレコメンダーシステムは、これまで主にマーケティングなどで活用されてきましたが、人事や企業戦略などの部門でも活用されようとしています。

 ATS(Applicant Tracking System)といわれる採用管理システムがあります。人材の募集から始まり、どのような人材の応募があり、それらの人材に対してどのような評価があり、どの人材を採用したのか。

 さらに、入社後、その人材はどこの部署に配属され、どのような業務に就き、どのような活躍をし、どのような評価を得ているのか。

 社内の人材一人ひとりを、応募から業務活動まで、関わった部署ごとの記録を一貫したデータにしてトラッキングし、分析するシステムです。

 これにより、自社ではどのような人材が活躍するのか、必要な人材像を把握することが容易になったり、逆に、足りない人材はどのようなものかもわかり易くなり、人事に関する意志決定をより正確にスピーディにします。

 日本ではまだまだ普及しておらず、私たち研究チームも企業と共同で本格導入のための研究を行っているところですが、このようなAIを活用した人事システムが当たり前のインフラとなる日もそう遠くないでしょう。

>>英語版はこちら(English)

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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