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K-POP世代が日韓相互理解の架け橋になる

李 英美 李 英美 明治大学 商学部 教授

若い世代が開く新たな日韓関係

 最近の若い世代は、日本も、韓国も、欧米も同じような感性をもっていると思います。韓国でヒットした音楽は日本でもヒットするし、日本でヒットしたものは、欧米でもヒットするのです。ある意味では、若い世代に真のグローバル化が進んでいると言えるかもしれません。

 そうした好きなものをきっかけとして、互いの国の歴史や伝統文化に興味をもち、それを学ぶことで、本当の相互理解が進むのではないかと思います。

 例えば、日本のマンガに惹かれて来日して、着物や刀に関心を広げる欧米の人はたくさんいます。同じように、K-POPが好きで韓国を訪れ、チマチョゴリを着て楽しんだり、伝統的な韓国料理を味わう日本人も多いのです。

 要は、現代では、大衆文化であれ、エンターテインメントであれ、良いと思ったものに国境はなく、逆に、そこからその国への興味や関心が膨らんでいくのです。

 そのとき大切なのは、国家や年長者が彼らに、仲良くしろとか、仲良くするなとか、強制しないことです。

 良いと思ったものを受け入れていけば、自然と相互交流は生まれていきます。国家が強制するものは、そのときの国家の都合や判断で変遷することがあります。でも、自然に生まれた相互交流や相互理解は、必ず定着していくと思います。

 いまの第4次韓流ブームの中で、面白いものがあります。ネットで配信されて人気となった「愛の不時着」というドラマです。これは、パラグライダーの事故で北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢と、それを助けた北朝鮮の将校の物語です。

 実は、私自身も、このドラマで北朝鮮に対するイメージが変わりました。

 なぜなら、韓国では、北朝鮮の首席はマンガなどで動物の顔で描かれたり、飢餓や食糧不足の報道が多いので、人間が住んでいるところなのか、というイメージだったのです。

 ちょうど、1980年代に、日本人が韓国に対して、家にテレビもない国だろう、と思っていたのと同じです。そのイメージを「冬のソナタ」やK-POPが変えていきました。

 同じように、「愛の不時着」が、私たちや、日本人の北朝鮮に対するイメージを変えていくのではないかと思います。

 特に、いまの若い世代は、生まれたときにはすでに韓流ブームがあり、日流ブームがあった世代です。彼らにとっては、悪い先入観や無意識の偏見もないのです。彼らにそれを植え付けようとするのは、国や年長者です。

 でも、若い世代の邪魔をしてはいけません。先入観なく互いの文化に接している彼らこそ、日韓の新たな関係を築くと思います。

 ヨーロッパの国々が様々な歴史を経て、EUをつくり、親近感をもちあうようになったように、同じことを、日本と韓国ができないことの方が不思議です。

 できないように働いている力はなにか、考えてしまいます。それは、少なくとも、若い世代にあるものではありません。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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