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2017.04.19

トランプ支持者たちに本当の救いはあるのか!?

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富裕層の富の再配分を断行できるか?

 むしろ注視すべきは、トランプ支持者たちの今後の反応です。いま、トランプ大統領はアメリカに工場を戻したり、移民の入国を制限するなど、目に見える形で支持者たちを喜ばせていますが、そのようなパフォーマンスによって、現状に不満を持っている労働者たちの生活を本当に上向かせることができるとは思えません。ただ、トランプが偉大な大統領となる可能性がまったく無いわけではなりません。実は、好例があります。100年ほど前、共和党幹部から「that mad man」(あの狂気の男)と危険視されながら副大統領に任命され、その後、大統領が暗殺されたために、代わって大統領に就いたセオドア・ルーズベルトです。彼は、不安を募らせる党幹部たちを尻目に、独占資本を規制したり、純正食品・薬事法を成立させるなど、国民が望むことを断行しました。いまでは、ラシュモア山に刻まれた4人の名大統領の1人です。トランプ大統領に必要なのは、国民の望みに本当に応える政策をとった、このセオドア・ルーズベルトのような大胆な行動力だと思います。確かに、いまのアメリカは第2次世界大戦後のように、世界で一国だけ飛び抜けた余裕と力のある偉大な国ではありません。しかし、それでも世界の経済大国であることに変わりはありません。問題は、一部の富裕層による収奪のいきすぎなのです。いま必要なのは、アメリカを再び偉大な国にすることよりも、格差を是正するために富の再配分を行うことでしょう。例えば、ウォールストリート改革のような大なたを振るい、富裕層の富を貧困層に配分するような政策を行えば、トランプ大統領の名は名大統領として歴史に残るかもしれません。

 トランプ大統領に投票した支持者たちが貧しいままであれば、アメリカの社会不安は増し、その行き詰まりを打破するために、また、自分たちにとって都合の良いパフォーマンスが行われるかもしれません。それが外交に現れる可能性もあります。その意味で、私たちはトランプ支持者たちの反応から目を離すことはできません。また、世界大戦の反省から始まった20世紀後半以降の世界の歴史の流れが、大国であるアメリカの内向きの保守主義によって転換してしまうのか、その鍵を握っているのがポピュリズムのトランプ大統領である以上、やはり、その支持者たちの反応からは目が離せません。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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