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一見、複雑な問題も、分割して考えれば最適解が見えてくる
2026.03.25

座右の銘、私のモットー一見、複雑な問題も、分割して考えれば最適解が見えてくる

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/座右の銘、私のモットー【9】

物事を捉えるうえでの私のモットーは、現実の複雑な現象をそのまま扱おうとするのではなく、一度抽象化して整理し、分割して考えることです。

私が専門とするオペレーションズ・リサーチは、企業活動や社会システムなど、あらゆる分野の複雑な問題を分析し、数理モデルを用いて最も効率的で最適な解決策を導きだす学問です。これらの課題は、抽象化して数理モデルを考えると、多くの場合、既に研究されてきた枠組みに当てはめられます。既存の知見を活用しながら新しい問題に挑める点が、この方法の大きな利点です。

たとえば少子高齢化の問題など、あまりに大きく複雑な問題を前にすると、どう解決すればいいのか見えづらい。しかしまず少子高齢化の定義は何かを考え、それに当てはまる数値から見つめて問題を分割し、それぞれの問題がどういう構造になっているのかを抽象的に捉え、本質に迫る数理モデルに落とし込むことが重要です。

オペレーションズ・リサーチで行う最適化では、必ず満たすべき「制約条件」を前提に、一番望ましい状態を数式で表した指標を「目的関数」として考えます。

たとえば転職先を選ぶときも、給与を最大限にあげたいならそれが目的関数になります。一方で、「最低600万円あればいい」というのであれば、それは目的関数ではなく制約条件です。そのうえで「働きやすさ」や「企業文化」を重視するのであれば、それが目的関数になり、年収600万円以上という条件のもとで最も社内環境が整った会社を選ぶ、という考え方に変わります。

つまり、自分が何を最大限に追い求めるのか(目的関数)、あるいは、どこまで満たせば十分なのか(制約条件)を整理する考え方が、オペレーションズ・リサーチの発想とつながってくるのです。

まさしく僕のキャリアがそうで、博士号を取ったあと企業に行くか大学に行くか迷っていました。もともと博士時代にベンチャー企業のアルバイトでプログラムを書いていて、その仕事も好きだったし、スタート時点の収入でいうとその企業の方が高かったんです。ただ、僕が目的関数としたのは、「自由に自分の時間を選択できること」だったため、大学教員を選びました。

旅行であっても「この予算内で一番いい経験をしたい」パターンや、「最低限の経験の中で極力予算を下げたい」パターンがありますよね。先日、エジプトを旅行した際も、目的関数は「記憶に残るような内容」だったため、予算は制約条件でした。学生時代は目的関数が予算でしたから、状況や心境の変化も俯瞰的に分析できて面白いです。

自分が何を一番大事にしていて、どんな制約があるのか。オペレーションズ・リサーチの考え方に当てはめることによっての気づきは、数多くあります。一見、複雑な問題も、パーツパーツで見るとよくある典型的な問題が、独自の形で絡み合っているのがほとんどです。何事も大きなところに目が行きがちですが、さまざまなところを観察し、どうなっているのか、どこで切り分ければいいのかを考えることが大切だと考えています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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