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自分を成長させてくれる人との出会いは、いつ訪れるかわからない
2024.07.24

人生のターニングポイント自分を成長させてくれる人との出会いは、いつ訪れるかわからない

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【76】

私のターニングポイントは、博士後期課程で敦賀貴之先生と出会ったことです。とても丁寧に細かくご指導いただいた経験は、今でも研究だけでなく、教育の面でも大変役に立っています。

2011年、留学先のカリフォルニア大学アーバイン校で統計学の修士号を取った私は、日本に戻ってマクロ経済の実証研究をしたいと考えていました。自分のテーマと一致するような先生を探していて見つけたのが、当時、京都大学大学院にいらっしゃった敦賀先生でした。敦賀先生にとって私は、ほぼ初めて受け持った大学院生です。当時、論文の書き方やプレゼンの方法をあまり知らなかった私に、何から何まで手取り足取り教えてくださいました。

たとえば論文のタイトルについては、そこが生命線になるからおろそかにしないこと。プレゼンを行う際にも、タイトルが良くなかったり、ありがちだったりすると聴きに来てもらえませんし、内容と一致していなければ大問題です。日本人は疑問形でタイトルをつけがちですが、海外の人には誤解を招くおそれがあるため、避けたほうがいいとも学びました。

また、同じ結論であったとしても、プレゼンが上手く、人に訴える力があれば伝わり方が変わってきます。プレゼンは誰が聴いているかわからない。その場で「できる人だ」と思わせることが、次の機会につながるといったことも教わりました。プレゼンに使うスライドの書体や文字の大きさ、レイアウトまで細かくレクチャーしていただいたこと、すべてが今に生きています。

わかりやすい授業のためには、どんな話し方をすればいいのか。どのような資料を作成すればいいのか。現在、教鞭を執る際にもとても意識していますし、ゼミの内容に入る前には、学生たちに論文の書き方から教えるようにもしています。今では人の論文の審査をすることもあるのですが、同じ結果に対してどうスムーズに読めるように書くかは、大事なスキルなのだと実感しています。

当時を振り返り、「関根さんには時間をかけすぎた」と冗談めかされるほど、親身になって、研究者として必要なスキルを本当に細かく教えていただきました。敦賀先生のご指導がなければ、今の自分はありません。先日、学会でお会いしたときにも、門下生である私の活躍を喜んでくださっていました。先生と出会わなければ、研究者としてのポジションもなかったでしょうから、とても感謝しています。

敦賀先生と出会えたのは偶然でしたが、そのおかげもあり、人との出会いの大切さを実感しました。それから今でも、いろんな場に足を踏み入れ、いろんな分野の人たちに会い、いろんなタイプの人たちと話すように心がけています。すると自分の知らない情報が得られ、世界が広がっていく。違った視点からの意見にふれ、自分では思いも寄らなかったことに気づける。研究の幅も広がりますし、人間としての成長もあります。その最たる出会いが、敦賀先生でした。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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