
人生で影響を受けた人物新しいことに挑戦し、自分のスタイルを確立しよう
教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【38】
これまでに影響を受けた先達は非常に多く、どの方も「私の今」につながっています。
研究者の道に進む出発点となったのは東京大学・名誉教授で法哲学の碧海(あおみ)純一先生です。
私はもともと理科一類でノーベル賞やフィールズ賞を取りたいと学んでいましたが、大学3年になるとき法学部に文転しました。すべての学びが新鮮な中、法哲学に科学哲学を取り入れた碧海先生の講義は、法学への関心を高めるきっかけになったのです。
講義の中では、数学基礎論を構築した数学者・論理学者でノーベル文学賞受賞のバートランド・ラッセル、科学哲学者のカール・ポパーに触れ、連鎖的に興味・関心が広がっていきました。
また、大学院での指導教授だった東京大学・名誉教授の新堂幸司先生も大きな影響を受けたひとりです。
新堂先生は民事訴訟法が専門ですが、私がトーマス・ベイズ牧師に由来する統計的意思決定論を用いて修士論文を執筆したため、先生が確率論を一から学び直して下さったことは今でもとても印象に残っています。
さらに、進化論が現在ではAIにまで活用されているチャールズ・ダーウィン、ゲーム論の基礎を固めてノーベル経済学賞に輝き、映画『ビューティフル・マインド』のモデルになったジョン・ナッシュ、囚人のジレンマの解決研究を行ったロバート・アクセルロッドなど、世界の偉大な研究者から大いに刺激を受け、結果的に理系の発想を法学に取り入れたスタイルを確立しました。
そもそも学びにおいて、文理で区別すること自体が大きな間違いです。垣根を超えて果敢にチャレンジすることが、学生にも社会人にも大切ではないでしょうか。
勉強が何の役に立つか分からない、というよくある疑問自体もナンセンスの極致です。役に立つものや価値が、石ころのように近くに転がっているのではありません。何事であれ、あなたがそれを“どう役に立てることができるか”こそがあなたの存在価値である、という発想を持つべきで、価値とは自分で創っていくものなのです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。