Meiji.net

朝の談笑が、共同研究の成果につながることもある
2024.01.31

人生のターニングポイント朝の談笑が、共同研究の成果につながることもある

リレーコラム
  • Share

教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【54】

私のターニングポイントは、博士の学位を取得後にポスドクとして過ごした、ベルギーにあるゲント大学での3年間です。海外旅行すらほぼ行ったことのなかった私は、日本のシステムとは何もかも違う世界に、最初はカルチャーショックを受けました。

所属していた研究室は、南米やアジア、ヨーロッパやアフリカなど、世界各国から多くの研究者や学生が集まった、国際色豊かなところ。日本で“当たり前”だったことが、ちっとも通用しません。価値観や考え方もそれぞれに違い、馴染むのには時間がかかりました。しかし徐々に話していくことで、さまざまな国の文化に触れ、日本の常識にとらわれず、より広い視野で物事を捉えられるようになりました。

また、日本では、夜遅くまで黙々と働くことを美徳だと感じる人も多くいましたが、彼らは残業をまったくしません。私もせっかく留学したのだから頑張らなければと、最初のうちは遅くまで働いていたのですが、海外、とくにヨーロッパの人々にしてみれば、就業時間外に働いているのは、自分の仕事のできなさを証明しているようなもの。休日は家族とゆっくり過ごすのが、彼らの“当たり前”です。その影響を受け、私も仕事は時間内に終わらせるようにし、週末はリラックスして過ごすことを心がけました。

研究室のメンバーの多くは、朝はコーヒーを飲みながら和気あいあいとディスカッションをしていました。実験もせずに何をサボっているのだと当初は思っていましたが、そのなかには研究成果の上がっている人が多い。後々気づいたのですが、あの時間を使って彼らは、一人では思いつかないような新しいアイデアを生み出したり、お互いの得意不得意を踏まえた共同研究の相談を進めたりと、物事を効率的に進めていたのです。

学生時代の私は典型的な昭和の日本人気質で、朝から晩まで一人で黙々と実験を行うタイプでした。しかしベルギーでの経験で、周囲と関わることの重要性を認識。できるだけ多くの人と話し、さまざまな意見を取り入れることで、それまでの狭い視野とは違い、多角的に研究を進められるようになりました。あのとき築いた海外の研究者とのネットワークも、今につながっています。固定観念にとらわれない新しい考えは、さまざまな人とのふれあいを経験することで生まれてくる。これは研究に限ったことではないと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

  • Share

あわせて読みたい