
2022.06.28
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
歴史に名を残す偉人から、カリスマ性のある著名人、その道を究めた学者まで。明治大学・教授陣に影響を与えた人物を通して、人生やビジネスに新たな視点をお届けします。
学部生時代からの恩師で、東京大学名誉教授であり、明治大学 研究・知財戦略機構の顧問・元特任教授である中山信弘先生です。知的財産法の研究者の道を進むきっかけをいただいたと思っています。
私は弁護士になりたくて大学の法学部へ入ったので、今思うとおこがましいのですが、研究者になるつもりは全くなかったのです。法学研究者なんて屁理屈ばかりでつまらないのではないか、と思っていたくらいです。
ところが、大学3年生の時に「著作権」をテーマにした中山先生のゼミに参加させていただいて、大きく考えが変わりました。
私が大学で学んでいた2000年頃はインターネットが普及し、著作権に関するいろいろな問題が起こっていた時期。著作権法自体には関心があったのですが、ゼミでの議論を通じて、研究者として知的財産法を取り組んでみても面白いのではないかと思うようになったのです。
中でも、複数の人が著作権や特許権を持った時にどういう権利関係で取り扱われるかという「知的財産の共有」というテーマが研究者を目指すきっかけになりました。このテーマ自体も中山先生の授業や教科書での記述で関心を持ちました。
民法における所有権の客体(権利の対象となるもの)は物理的な存在を有する有体物なのです。ですから複数の人が同じものを同時に使うことは基本的にはできません。
例えば、1冊の本を2人が同時に読むというのは基本的にはできませんよね。民法ではそういう前提のもと、様々なことが決められているのです。
しかし、知的財産の客体である発明等の“情報”は、同時に複数の人がその財を享受できます。特許法では、特許権の共有者がそれぞれ自分自身で使う限りは自由に発明を実施できることを定めていますが(特許法73条2項)、この規律は、このような、有体物と、情報という権利の客体の性質の違いに基づくものである、という中山先生の説明に、強く関心をひかれました。
さらに、同じ知的財産といわれるものなのに、特許権と著作権では規律が違っており、国によっても違う、これはどうして違うのだろうか、その理由を明らかにしたいと思うようにもなったことが、研究テーマを選ぶきっかけとなりました。
そういった知的財産法を巡る様々な問題について、ゼミなどで中山先生や学生同士で活発に議論をする機会を得たことは研究者の道を進むうえで大きな要素となりました。
中山先生の元ですでに学ばれていた先輩方にも親切にご指導いただき、学生時代から現在に至るまでずっとお世話になっています。研究者の道を進むうえでは、中山先生との出会いと共に、先輩方と学生時代に知り合えたのも大きかったですね。
皆さんもお仕事やプライベートでたくさんの出会いがあると思います。人との出会いや繋がりはぜひ大切にしてください。その縁が人生を切り拓くきっかけになるかもしれませんから。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。