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相手を信頼してまかせられるような関係性を作ろう
2021.09.02

人生で影響を受けた人物相手を信頼してまかせられるような関係性を作ろう

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【33】

私が影響を受けたのは、大学院の指導教官であった船曳建夫先生(元東京大学 大学院教授)です。

先生のもとで学んでいた当時、アメリカの肥満についての人類学的研究はほとんど誰もやっていない領域でした。

博士論文の執筆中は常に不安と闘っていましたが、そんな私に対して先生は、「ああしなさい」「こうしたらどうなの」と細かく指示することなく、ずっと見守っていらっしゃったのです。

そして、私が収集したデータを持ち帰り、ようやく考えをまとめて先生に伝えられるようになると、親身になって論文の完成まで一緒に伴走してくださいました。

先生の指導の中で特に印象的だったのは、「数年後に研究が進んで新たなことが明らかになるとしても、今の時点で私たちはこれを正しいと思って描くんだ」と励ましてくださったこと。

「あなた」ではなく、「私たち」という言葉が胸に響き、心強さとともに、指導教官としての懐の深さを感じました。

また、真摯にデータを集め、自分が見た世界をいきいきと描くことこそが、文化人類学の研究には必要なのだということも教えてもらいました。

いまは私自身も指導する立場になりましたが、学生のことを待つことができず、つい「こうしなさい」と口出ししてしまうことがあります。

船曳先生がなさったように、“相手のことを自立した大人として尊重し、信頼してまかせてみる”。

学問の分野に限らず、ビジネスの世界でも、相手の成長を促すために大切なことではないでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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