座右の銘、私のモットー「掘り下げていくと地下水脈にあたる」
教授陣によるリレーコラム/座右の銘、私のモットー【10】
私のモットーは、「掘り下げていくと地下水脈にあたる」です。これは、大学院時代に長くご指導いただいた恩師の言葉です。
先生はよく、「一つのテーマを徹底的に掘り下げなさい」とおっしゃっていました。研究というのは、まずは一点を深く掘ることが大切だ、と。
そして、ある深さに達すると、まるで地下水脈に行きあたるように、思いがけない広がりが見えてくるのだと教えてくださいました。
地下水脈といっても、水は一方向にしか流れない一本の水路ではありません。他の水脈とつながり、そこから横へ、別の場所へと自在につながっていき、地上に噴き出す。研究もまた同じだというのです。
当時の私は、家族法を専門にしようという志は固めていましたが、家族法と一口にいっても、婚姻、親子、相続、扶養など多くのテーマがあります。一つを深く掘るとしても、いったいどこから掘り始めればよいのか、正直なところ戸惑っていました。
転機となったのは、同性パートナーシップの研究に取り組むことになったことです。
2000年代初頭、ドイツで登録パートナーシップ法が成立し、その後の法改正や判例の展開が次々と生まれていきました。私はその動きをほぼリアルタイムで追い続けることになりました。
一見すると限定的なテーマのように見えるかもしれませんが、掘り下げていくうちに、問題は婚姻制度の本質や「家族とは何か」という根源的な問いへと広がっていきました。
さらに研究を進める中で、生殖補助医療の問題や親子関係の法的構成へと関心は広がりました。
同性カップルの家族形成を考えることは、必然的に「親とは誰か」「血縁とは何か」という問いに向き合うことでもあります。
また、LGBTQ+に関わる研究の過程で性別不合の問題を扱うようになり、そこからもやはり親子関係や戸籍制度の問題へと議論がつながっていきました。
振り返ってみると、確かに一つのテーマを掘り下げた先に地下水脈がありました。そこから、私の研究は思いがけない方向へと自然に広がっていったのです。
研究者にとって、何を自分のテーマにするかという問題は、タイミングや偶然の重なりによっても左右されるでしょう。しかし、一度テーマが見えてきたならば、ひたすら深く掘ってみること。その先にこそ豊かな広がりが待っているのだと、今も実感しています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
