
フードデリバリーサービスは、スマホで料理を注文すれば短時間で届けてもらえる便利な仕組みとして、私たちの生活に広く浸透しています。その一方で、配達の仕組みに大きな課題が潜んでいます。配達員にどう注文を割り当てれば、できるだけ安く、かつ遅れの少ない配達を実現できるのか。私が専門とする「オペレーションズ・リサーチ」を通じたフードデリバリーサービスの最適化について解説します。
意思決定を科学的に支援する学問がオペレーションズ・リサーチ
「オペレーション」とは、人が行う作業一つひとつのことです。たとえばファストフード店での「ポテトを揚げる」「ドリンクを注ぐ」などがそうですし、仕事に限らず「掃除機をかける」「洗濯物を畳む」など、人の作業はすべてオペレーションと言えます。その意思決定を科学的に支援する学問が「オペレーションズ・リサーチ」です。数理モデルやデータ分析を用いて最適化を研究する分野であり、データサイエンスの一つに位置づけられています。
「お昼ご飯をどの店で食べるか」「目的地までどのルートで行くか」といったものも意思決定です。たとえばお昼ご飯なら、「早く提供してほしい」、「おいしいものを食べたい」、「なるべく安く済ませたい」など、人によって良い意思決定の基準も変わってきます。オペレーションズ・リサーチでは、何を重視しているのかヒアリングし、「良い」の定義を定量化して数式に落とし込み、最適なものを提示します。つまりは言葉で定義するフェーズと、それを解くフェーズ、文系と理系の両方で構成されているのです。
スーパーの商品をどの位置に置くかなど、今までは現場の感覚で行っていた棚割りもオペレーションズ・リサーチで最適化できる課題です。人のマッチングも同様で、たとえばアルバイトのスケジューリングも「新人だけだと回らない」など、さまざまな条件を加味しながら、全員の満足度が最も高くなるようなシフトを組むことが可能です。
なかでもフードデリバリーサービスは、オペレーションズ・リサーチのさまざまな要素が組み合わさったテーマであるというのが、難しくも興味深いポイントです。
アルバイトのシフトを組む場合であれば、注意すべき点は「誰と誰をかぶらせないようにする」といった程度です。しかしフードデリバリーでは、雨が降ると配達員が不足するなど、不確実な要素が多く存在します。さらに、人手不足を避けようと運営側が報酬を引き上げると、今度は配達員が増えすぎて仕事が行き渡らず、同業他社へ移ってしまうリスクも生じます。加えて、人手が足りず配達が遅れれば、お客さんの満足度は下がりますし、一日の中でも天候が急変することがあり、状況は刻一刻と変化します。
このようにフードデリバリーサービスには不確実な要素が多く、最適な判断を下すこと自体が大きな課題となっています。こうした意思決定の仕組みを探究することには、大きな意義があります。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
