フードデリバリーサービスの課題も、要素ごとに切り分けるのが大事
オペレーションズ・リサーチでは、対象とするテーマを要素ごとに切り分けて抽象化し、数理モデルとして捉え直すことが重要です。フードデリバリーサービスであれば、「注文と配達員の割り当て」「配達員のシフト」「需要の変動への対応」といった具合に分割し、本質的な課題の解決へと導きます。
フードデリバリーにおける多くのサービスでは、登録制の「個人の配達員(クラウドソース型配達員)」が注文ごとに働いています。これは需要に合わせて人を集めやすく、供給を柔軟に調整できるのが強みです。ただし、天気が悪い日やランチタイムなど注文が急に集中する時間帯には配達員が不足し、注文が遅れることがあります。
そもそも配達員が働くか働かないかも、その日の気分で決められるため、何人稼働するかもわかりません。運営側も、1配達あたりの報酬を変えることによって全体の流れを多少はコントロールできますが、確実ではありません。さらにはお客さんがいつ注文するか、料理がいつできるかもわかりません。
一方で、一部のフードデリバリーの運営プラットフォームや飲食店では、シフト制のアルバイトも含めた「専属の配達員(自社配達員)」を雇っています。需要と供給がうまく釣り合っているときには、人件費を抑えつつ安定したサービスを提供できます。しかし、需要が少ないときでも人件費が固定費としてかかるため、効率が悪くなる場合があります。それでも、専属の配達員がいることはサービス全体の安定性を高める効果があります。
クラウドソース型配達員は「柔軟性」が強みで、自社配達員は「安定性」が強みです。しかし現実には、「速さや便利さを重視するとコストが増え、安さを重視すると遅延が増える」というジレンマが生まれやすいのです。
私たちの研究では、この2種類の配達員をどう組み合わせ、どう注文を割り当てれば、できるだけ安く、かつ遅れの少ない配達を実現できるかを、数理モデルとコンピュータ実験を用いて分析しています。実際、すべてをクラウドソース型配達員で対応するよりも、ベースラインは自社配達員でまかない、足りないところをクラウドソース型配達員で調整するほうが、安定的かつコストを抑えられる可能性が高く、そういう形態のサービスも出てきています。
こうした研究は、フードデリバリー業界にとどまらず、宅配便などの配達業務や、短時間の労働力を集めるスポットバイトの仕組みなどにも応用できると考えています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。
