
人生で影響を受けた人物人の支えに感謝し、自分のあり方を見つめ直そう
教授陣によるリレーコラム/人生で影響を受けた人物【42】
私は今年の4月からグローバル・ビジネス研究科で税法についての授業を担当していますが、それ以前は30年余にわたり国税庁に勤務していました。
課税を執行する側から研究者へと道が変わった今、改めて税制度の一つひとつを点検し、時代に合わせて直すべきところを発見・発信していかなくてはならないと心がけています。
私が税金のことをより深く理解したいと思ったのは、国税庁在籍時に出会ったボランティアの存在がきっかけでした。
読者の皆さんはあまりご存知ないかもしれませんが、実は税金の仕事は税務署だけが担っているわけではなく、「青色申告会」、「法人会」、「間税会」、「納税貯蓄組合」などの関係民間団体に所属する納税者の方たちが陰でサポートしてくれているのです。
その方たちは自分の事業を経営する一方で、学校を訪問して生徒に税金の仕組みを教えたり、税をテーマにした作文コンクールを開催したり、確定申告の時期には個人事業主に書類の作成法をアドバイスしたり。
誰に強制されるわけでもなく、無報酬で、ただこの国のことを思って税金に関わる活動を行う。日本の税制度はこうした方たちによって支えられているところが大きいのです。そのことを知ったとき、とても心を打たれました。
もちろん私だけでなく、国税庁(本庁、国税局、税務署)に勤めている職員の方たちは、関係民間団体のボランティアに敬意を払っています。
このような私心のない行動は、周囲の人たちに影響を与え、健全な社会秩序の維持にもつながっているのではないでしょうか。
皆さんの近くにも陰で支えてくれている人がきっといるはずです。その存在に気づき、感謝することから新しい一歩が始まるかもしれませんよ。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。