ダークウェブから得られる示唆は大いにある
もちろん、犯罪や違法行為は取り締まらなくてはなりません。私たち誰もが安心して、快適に暮らすためには、もちろん法治体制は必要であり、維持していかなくてはなりません。
一方で、通貨は匿名であるから使いやすいのは、私たちも同様です。
いま、各国の中央銀行などが暗号資産の研究を進めています。その結果、国が保証するデジタル通貨が発行されるようになるかもしれません。すると、私たちの生活の利便性は大きく高まるだろうと言われています。
しかし、そのとき、通貨の匿名性が保証されるのかは、実は、不透明です。
そもそも、ビットコインが提唱された根底には、通貨の管理を国に委ねるのではなく、ブロックチェーンの仕組みによって私たちみんなで行おう、という概念がありました。
しかし、暗号資産は投機の対象と見なされているいま、その概念はまったく活かされていません。さらに、中央銀行の管理下でデジタル通貨が発行されることになれば、その概念とは真逆で、通貨は匿名であるから使いやすいという事実を失うことになるかもしれません。
すると、そのデジタル通貨は、本当に利便性が高い通貨と言えることになるでしょうか。
ダークウェブ上で、Torや暗号資産の技術が違法行為に悪用されているというのは事実ですが、それが人のうっかりミスによって綻ぶことや、詐欺が起こることを前提に信頼性を高める工夫をしていることも含めて、ダークウェブには人の一面が曝け出されているとも言えます。
そうした観点から見たとき、ダークウェブから学ぶこと、示唆を得ることは大いにあると思うのです。
最後に、いまの状況で、一般の人がダークウェブの闇サイトや暗号資産に安易に手を出すのは危険であることもお伝えしておきます。
ダークウェブにアクセスするなら、通信技術に自信があり、自分の情報を守る術を知っている人。暗号資産による投機を試みたいならば、損をしても良い範囲で行うことをお勧めします。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。