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ギタリストを目指した私が経済学者になるまでの話
2025.11.05

学びを加速させるアドバイスギタリストを目指した私が経済学者になるまでの話

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/学びを加速させるアドバイス【14】

私は昔から大学教員になりたかったわけではありません。高校時代はメタルやハードロックが好きで、ギターで食べていけないかなと考えていました。

なので、大学に行く気はなかったのですが、結局、親に怒られて一浪し、大学進学はしました。当然、最初から経済学を学びたかったわけでもなく、入試日程的に受験が可能な大学を受けて、受かった学部に進学しただけというのが、実際のところです。

こうして音楽の道をあきらめることになるわけですが、大学生時代から、一般的な会社勤めとは少し違ったかたちで、独立した仕事がしたいと思っていました。そこで、公認会計士を目指したこともあったのですが、自分が思い描く仕事のイメージとは違うかもしれないと感じたのでやめました(現在、全力で目指している方には失礼な話ですが)。

じゃあ何をしようか、ということで、当時、いろいろな本を読み漁った結果、「複雑系」という学問領域があることを知りました。数学のカオス理論などを使って、社会や世界のさまざまな現象を理解するという分野です。これは面白そうだと思い、経済学における複雑系の研究者を目指すことにしました。

ところが、結局はこれも大学院時代に挫折します。端的に言って、私には難しすぎたのです。

このように、私は強い信念を持って一直線に特定の分野の研究者になった人間ではありません。現在は経済格差の研究を主に行っていますが、これも最初から「社会にある格差をなくしたい」という熱いモチベーションを持っていたわけでもありません(もちろん今は研究に情熱を注いていますが)。

多くの学生は自分が何をしたいのか、迷ったり探したりしていると思いますが、私もそんな感じだったので何も偉そうなことは言えません。

ただ、過去の自分に向けてアドバイスを送るとしたら、「もっと色々な経験をしなさい」と言います。なにが自分に向いているのか、向いていないのかは、しばらくやってみないとわからないからです。

やる前に向いているかどうかを考える時間は、無駄だと思います。たとえば、もし今、自分が大学生だったら、音楽や動画の配信にチャレンジしてみたでしょう(ひそかに今勉強中だったりします)。

あとは、大量に本を読むのもおすすめです。ジャンルは問いません。量をこなしてください。年間100冊と言わず、1000冊くらいの勢いで。

最後に、自分の生産性を高めるための投資を行いましょう。例えば、AIは活用していますか? 少し前であれば、若い人はPCやIT系技術に強くて、おじさんは駄目みたいな風潮がありましたが、最近は若い人でもスマホは強いけどそれ以外は駄目という人が多いです。

しかし、スマホのような情報を閲覧するツールだけでは、何かを作り出すのは難しいです。どんな分野であれ、コンテンツの消費ではなく、自分から何かを創造したり、発信していくためにはツールとスキルが必要です。

世の中には自分のアイディアを形にしたり、やりたいことの手助けをしてくれるツールがいっぱいあります。そういったものを学ぶのには時間とお金を惜しまず投資をして、将来の自分の生産能力を高めていきましょう。大学での勉強は、その一つです。

迷っていい。試せばいい。その繰り返しが、学びを加速させていくのだと思います。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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