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異文化に触れて広がった、思考や感覚のスケール

池田 功 池田 功 明治大学 政治経済学部 教授

考え方や価値観が変わるほどの出来事に遭遇したら、それは成長へのチャンス。明治大学の教授陣が体験した人生のターニングポイントから、暮らしや仕事を好転させるヒントを探ります。

教授陣によるリレーコラム/⼈⽣のターニングポイント【11】

大学院で日本文学を研究していた時に、韓国の大学で教えるため、現地に赴任したことが私のターニングポイントになりました。

それまでの私は、外国に行ったことなどなく、外国に強い関心もありませんでした。ところが30歳になった頃、指導教授から「韓国の大学で教員を探しているので行ってみないか」という話をいただいたのです。

「韓国語もできない私がなぜ?」と初めは躊躇したのですが、「これも運命か」と思い直し、着任を決めました。そして1988年から2年間、韓国の大学で日本語と日本文学の教鞭をとることになったのです。

韓国人は、日本人と外見はほとんど変わらないのですが、韓国は準戦時体制下にあり、国内情勢も不安定でした。学生は毎日のようにデモを行い、大学のグラウンドでは軍事教練も行われていたのです。

また、儒教の教えが強く残っており、年上の人の前でタバコは吸えず、お酒は横を向いて飲むなど、文化や習慣の違いも、ここが異国であることを感じさせました。

しかし私がいた日本文学科の先生や学生たちは大変友好的で、一緒に食事やキャンプに行ったりしながら、彼らの考えや社会の問題、日韓の歴史など様々なことを語り合い、私はたくさんのことを学んだのです。

その後は、ドイツの大学やインドの大学院での勤務も経験しました。外国に行くたびに日本の文化とは異なる世界に大きな刺激を受け、人のネットワークもどんどん広がっていきました。

研究テーマも、それまでの内向きなものから、「世界における日本文学の受容」や「近代日本人文学者の韓国への視点」など、もっとグローバルなものに変わっていったのです。

今はネットで、ほとんどの国や文化が調べられますが、生身の人間が外国に滞在すると、いやな目に遭うこともあります。しかしそれも体験になり、思い出になり、人に語れる教養になっていくのです。

私が身をもって体験したことですが、若い時に異なった文化・民族・歴史などに触れることは、その人の成長を大きく促してくれます。みなさんも機会があれば、ぜひ、世界に飛び出してみてはいかがでしょうか。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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